先日、ラー・エ・ミクニで、江戸東京博物館の竹内誠館長の卓話を聞く機会に恵まれた。
始まる前に名刺交換をさせていただいたが、、同博物館に伺って江戸図屏風などを見てきたことや、東京の伝統野菜についても40種類も復活していることなどもお伝えした。
竹内館長は、リニュアルに向けて展示パネルなどのチェックで、お忙しい日々を送られているそうだ。
三國清三シェフの挨拶で始まった勉強会。
竹内館長の卓話は1時間半程で、同博物館がかつて特別展「明治のこころ モースが見た庶民のくらし」のエキスを「外国人が見た幕末・明治の江戸東京」として、興味深くお話しいただいた。
日本の滞在記録を書いた、大森貝塚の発見者エドワード・モース、トロイア遺跡の発掘で知られるハインリッヒ・シュリーマン、英国生まれの植物学者ロバート・フォーチュン、オランダ商館付医官のシーボルト、アメリカ海軍のペリー提督が残した言葉が紹介され、特に、日本と自国を比較しているところに焦点を絞って、解説された。
同店、猪俣直久シェフからメニューの説明があった。
上の画像をクリックするとメニュー。
黒トリフの塊をイメージした鴨のフォグラのテリーヌ。
シャンパーニュはドラビエ・リュツト・ナチュールNV
竹内館長は、日本人の風習批判として、モースの言葉を紹介した。
「アメリカでは一般的である婦人に対する謙譲と礼譲とが、日本では目立って欠けている。
馬車なり人力車なりに乗る時には、夫が妻に先立つ。
道を歩く時には、妻は夫の、すくなくとも四、五フィートあとにしたがう。
その他いろいろなことで、婦人が劣等な位置を占めていることに気がつく。」

テーブルの向かいには、日本橋「ゆかり」の三代目野永喜三夫さんと、神楽坂「天孝」のご主人新井均さん、レストランモナリザの河野透シェフ、お隣が六本木ヒルズクラブの山口拓哉シェフの皆さんと親しく、ディナーをいただいた。
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もっちりとして、弾力のある白身の黄ハタのカルパッチョ キャビア添え
竹内館長は日本人の特質として、モースが・・・・
「衣服の簡素、家庭の整理、周囲の清潔、自然及びすべての自然物に対する愛、あっさりして魅力に富む芸術、挙動の礼儀正しさ、他人の感情に就いての思いやり・・・これ等は恵まれた階級の人々ばかりでなく、最も貧しい人々も持っている特質である。」を紹介。
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イカスミのリゾットに、手長海老と烏賊のフリット添え
白ワインはソアヴェ・ラ・ロツカ“11
フォーチュンの話からは
「日本人の国民性のいちじるしい特色は、下層階級でもみな生来の花好きであるということだ。
気晴らしにしじゆう好きな植物を少し育てて、無上の楽しみにしている。
もしも花を愛する国民性が、人間の文化生活の高さを証明するものとすれば、日本の低い層の人びとは、イギリスの同じ階級の人達に較ベると、ずっと優って見える。」
イギリス人のフォーチュンは、日本人の文化生活の高さを悟ったようだ。
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ラディッキオを詰めた自家製ラヴィオリに、ブルーチーズのゴルゴンゾーラチーズのソースに、赤ワインはソアヴェ・ラ・ロツカ“06がピッタリ。
日本人の思いやり・・・としてモースの言葉を紹介した。
「街路や小さな横丁等は概して散水がよく行われている。
路の両側に住む人々が大きな竹の柄杓で打水をしているのを見る。」
汽車に間に合わせるためには、大いに急がねばならなかったので、途中、私の人力車の車輪が前に行く人力車の轂にぶつかった。車夫たちはお互いに邪魔したことを微笑んで詫びあっただけで走り続けた。
私は即刻この行為と、我国でこのような場合に必ず起る罵詈雑言とを比較した。」
栃木県産和牛のタリア一夕 赤ワインソース
治安の良さとしてもモースは
「今日の午後、私はまた博覧会へ行き、そこに充ちた群集の中を、歩きながら、財布を押え続けたりしないで歩き得ることと、洋傘をベンチの横に置いておいて、一時間立って帰って来てもまだ洋傘がそこにあるに違いないと思うことが、如何にいい気持であるかを体験した。」
東京オリンピックの招致でも、落とした財布が戻ってくるとアピールしたが、江戸の時代からのものだったのだ。
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食後酒はイタリアのグラッパ。
チョコレートのタルト ヴァニラジェラート添え
ペリーは
「日本人は非常に器用であることが分かる。
道具が粗末で、機械の知識も不完全であることを考えれば、彼らの完壁な手工技術は驚くべきものである。
日本の職人の熟達の技は世界のどこの職人にも劣らず、人々の発明能力をもっと自由にのばせば、最も成功している工業国民にもいつまでも後れをとることはないだろう。」
町工場がもつ技術力の高さが、日本製品の一種のブランドになっているが、ペリーも見抜いていた。
竹内館長には、「江戸の食文化」についても、幕末期の江戸勤番武士の生活を、当時の記録「酒井半四郎日記」「江戸自慢」「東武日記」を事例に話を伺った。
皆さん、興味深いお話に引き込まれていて、もっと聞きたいと云う事だった。