昨年の10月だったか、(公財)江東区文化コミュニティー財団が運営する江東区深川江戸資料館の古田智子さんからメールを戴いた。
深川江戸資料館は、江戸時代の天保年間、深川佐賀町の町並みをモデルに江戸庶民の住む町並みを実物大で想定復元している展示施設で、私も何回か伺ったことがある。
この展示室には、解説ボランティアが111名登録されていて、日本語と英語でそれぞれ来館のお客様に展示説明の活動をしているという。
最近、江戸東京野菜が話題になっていることから、館内に復元されている八百屋「八百新」の解説では、江戸時代の野菜についての質問も多くなっているということから、解説ボランティア皆さんの要請から、今回、解説ボランティアを対象とした江戸東京野菜の研修会を開催したいと云うもの。
天保年間、深川佐賀町の町並みの復元。
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(公財)江東区文化コミュニティー財団では、同館以外に、芭蕉記念館と、中川船番所資料館があるが、
昨年の5月に、「中川そらまめ祭り」がはじめて開催された時に、呼ばれてお話をしたことがあった。
古田さんのお母さんが、その話を聞いていただいたようで、「面白かった! 」と云う情報が伝わって、お招きいただいたようだ。
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同館へのアクセスは、都営大江戸線と半蔵門線の「清澄白河」下車だが、半蔵門線の出口を出たところの壁面に「江東区深川江戸資料館」の案内があり、
左端に「八百新」の店先のパネルには、砂村ナスと、亀戸大根の立体的ディスプレーが興味をそそっていた。
解説ボランティアの皆さん、中にはお勤め帰りの方もいて18時30分から始まった会場は、50名を超える方々がお集まりいただいた。
同館の小張洋子さんの話では、このような研修会は年数回開催しているそうだが、皆さん野菜の質問を受けることが多くなったようで、今回は特に参加者が多いと話されていた。
パワーポイントも2時間用の内容で構成したが、すでに質問いただいていたので、これらを盛り込んで、進めた。
1、亀戸のダイコンと練馬ダイコンは別品種でしょうか?
亀戸ダイコンは、摂津の農民が持ち込んだ四十日大根と云われている。
練馬ダイコンは、五代将軍綱吉が尾張から持ち込んだ大根で、諸説がある話をした。
2、青菜として江戸で食されたのは、小松菜以外ありましたか?
漬菜と云えは「三河島菜」と云うことで、その物語をお話した。
3、江戸時代に青果市場はありましたか?
千住市場、神田青物市場、駒込の土物店の三大市場と、京橋大根河岸と、深川の四つ目市場等、竪川筋に市場があったことも紹介した。
4、砂村の促成栽培について。
促成栽培の方法・時期・野菜の種類・買った人・値段等々教えてください。
日本橋魚河岸の魚のアラ等と落ち葉等とを混ぜて発生する発酵熱を利用して、季節先取りの野菜作りが行われたことを説明、促成栽培発祥の地として、砂町の志演尊空神社に説明板があることを紹介。
又、昭和32年発行の江東区史を参照することもお薦めした。
5、カツオの早物喰いは有名ですが、野菜も同じ様な事が言えたのですか?
砂村の農家が将軍の病気見舞いに促成栽培のスイカを献上したというのは本当ですか?
春一番に出荷される亀戸大根は、競って買い求めた話は有名だが、他人より早く食べたことを自慢する江戸っ子の気性は、季節限定の伝統野菜の「はしり」には、競って買い求めていた。
江東区史には、スイカ献上についても書いてある。
6、大島(南本所出村周辺)で「そら豆」の生産がされていたか?
そら豆は、中川流域で栽培されていたが、大島と限定した栽培地の記録は残っていない。
7、深川の八百屋について。
・深川の八百屋さんは主にどこの市場で野菜を仕入れていましたか?
・市場で仕入れするのに許可が必要でしたか?
・産地直送で直接農家から仕入れする事はありましたか?
辻のようなところに、農家が荷を持ってきて売り始めたのが、市場形成の始まりで、
農家が売りに来たりしていた。
深川の八百屋は竪川筋に、中川などを利用して葛飾方面や、新川・小名木川を使って江戸川方面の野菜が運ばれてきていた。
同館の展示物についてもアドバイス。
亀戸ダイコンは、白茎が特徴で根も葉も柔らかいことを解説
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当時のニンジンは、滝野川ニンジンに代表される長ニンジンで1m近くあったことも紹介した。
7、海に近い江東区ですが、塩害はなかったのでしょうか?
塩害もあったと思うが、その地域の気候風土に馴染んだ野菜が残っていくわけで、江戸の農業先進地であった砂村では、多品目の野菜が生産されている。
2時間たっぷり休憩なしでお話をさせていただいた。
帰りがけに、部屋の出口で一人のご婦人に声をかけられた。
昨年の5月に、「中川そらまめ祭り」でお話した後で、主催者が江戸東京野菜の苗を土産に参加者に配布したが、その方、もらった鳴子ウリと、内藤カボチャの両方とも実を成らせたという。
種を採ることが出来たので、今度はタネを何時播いたらいいかという。
嬉しい報告をいただいた。
尚、「深川江戸資料館」の勉強会には「農」のある暮らしづくりのアドバイザーとして(一財)都市農地活用支援センターから派遣された。
会場には、江東区文化コミュニティー財団「砂町文化センター」の横須賀真澄さんが見えていて、同センターが5月から開催予定の企画に協力要請をされた。
同館では、「相撲の歴史と本所・深川」が11月まで行われていて、
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入り口に横綱大鵬の資料が展示されていた。
地下鉄を降りて、深川江戸資料館前の通りに出たら、夕暮れの中、電気が付いていた店に入った。
「江戸みやげ屋」(03−3641−6305)のご主人にカメラを向けたら、深川めしの素を手に取ってポーズをとってくれたので、折角だから購入した。
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近くには、あさりの佃煮を売る「魚保」もあった。
公衆便所も江戸風だ。