多摩・八王子江戸東京野菜研究会(福島秀史代表)では、日野市の七ツ塚ファーマーズセンターで「東光寺ダイコン」の勉強会を開催した。
数年前に設置された七ツ塚ファーマーズセンターには行ったことがなかったので、少し余裕を持って車で家を出たが20分程で着いた。
収穫から出荷までの見学や、試食をはじめとする座学など、東光寺ダイコンを知るイベントとしては、初めての企画で盛りだくさんの内容だったので江戸東京野菜コンシェルジュの皆さんをはじめ、野菜ソムリエや地域リーダーなどが集まった。
七ツ塚ファーマーズセンター前で、福島代表の挨拶で始まった。
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日野市新町の台地は、日野市の中でもまとまった農地が連坦している。
東光寺上地区農業散策マップが掲示され、3コースが設定されていて、農の風景を楽しむことができる。
掘り下げられた中央自動車道が、東光寺ダイコンの畑の脇を通っている。
ファーマーズセンターから、歩いて2分足らずのところで、生産者の奥住善則さんが一人黙々と東光寺ダイコンを抜いていた。
奥住さんは、今年の東京都農業祭の江戸東京野菜のコーナーに来てくれている。
東光寺ダイコンについては、日野市史 民族編によると、「明治26年頃、板橋方面から来た薬の行商人が練馬大根の種子を勧めた・・・」とあり、昔から練馬細尻系が栽培されていて、八王子の市場に出荷され、織物工場の女工さんの食事に欠かせないおかずだった。
日野市の農業は、多摩川流域と云うこともあり、水田が広がり、米麦が主で、雑穀やイモ類も生産されていた。
東光寺ダイコンは昭和40年代、神田や築地市場にも出荷された。
その後、多摩地区の人口増などにより消費地は多摩地域に移ったが、最近では生産者の減少などから宅配に代わっている。
我々が畑に着いた時、奥住さんは、一心不乱、北を背にして、一つのリズムで汗をかきながら黙々と抜いてた。
この畑では2500本を栽培、今日の予定では500本を抜くそうで、後2日はかかるという。
明治、大正と同じ八王子の市場に出荷していた高倉ダイコンと東光寺ダイコンは、元は練馬系細尻ダイコンと云われている。
現在では、高倉ダイコンは立川太三郎さんが、東光寺ダイコンは奥住さんが採種を行っていて、それぞれの特徴が引き継がれている。
ウイルスに強い系統を選抜してきた東光寺ダイコンは、高倉ダイコンより首部や尻部が細い特性を持っている。
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採種用に選抜してあった大根を見せてくれたが、主根の先端から細い根が70センチほど伸びていた。
この畑が、深く耕されていることがわかる。
奥住さんのハウスは、日野用水下堰に沿った栄町5丁目信号近くにある。
日野市が作った看板には「町のお宝発見事業、東光寺大根、ここにあり」、
「この畑では、数少ない日野の旧地名がつけられた農産物である「東光寺大根」を栽培しています。」とある。
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ハウスの中では、奥住さんのご両親が、出荷の作業をしていた。
東光寺ダイコンの特徴である首部は500円硬貨の太さだ。
参加者もハウスに入らせてもらった。
野菜ジャーナリストの篠原久仁子さん、江戸東京野菜コンシェルジュ協会の上原恭子理事も参加。
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1週間干した東光寺ダイコンが主催者から配られた。
会場は、七ツ塚ファーマーズセンターの多目的室に移り、福島代表からパワーポイントを使って「江戸東京野菜とは!」から、「東光寺ダイコンについて」の解説が行われた。
同会八幡名子さん(江戸東京野菜コンシェルジュ)の指導で、食べ比べと、試食会が行われた。
東光寺ダイコンの生と、干したもの、それに交配種の青首ダイコン。
青首ダイコンは味に深みがなかったが、東光寺ダイコンは、はじめ甘く感じたが、嚙むうちに辛み成分もわずかに感じられた。
ダイコンは部位によって異なるが、ダイコンの首部は甘く、先端に行くほど辛くなるが、今回は東光寺ダイコンの首部を食べたが、青首ダイコンは、青と白の境目当たりのようだった。
奥住さんから頂いた干し東光寺ダイコンが
あまりにも美しくしなやかで、もち肌だったので
切ってしまう事に罪悪感を覚え、頭を悩ませました。
出た答えは、出来るだけ切らずに作れる太巻きでした。
◎東光寺ダイコンの味噌炒め(下中)
干しダイコンのシャキシャキ感を生かすため、
さいの目にカットした所がポイントです。
次に、生の東光寺ダイコンレシピから。
◎東光寺ダイコンのマリネ〜ゆず風味〜(中左)
七ツ塚ファーマーズセンターで販売していた日野産のゆず。
日野産の東光寺ダイコンと合わせて間違いないと思い、
レシピに組み込みました。
◎東光寺ダイコンのアンチョビ和え(右上)
ピリリと辛い東光寺ダイコンは、塩気の強いアンチョビ、
そして同じくピリリと辛いカイワレ大根と合うかなと思い、
このレシピが生まれました。
◎東光寺ダイコン葉ペーストのパスタ(中右)
東光寺ダイコンの葉っぱは、とても立派。
でも畑から抜いてしまうと枯れやすいので、
沢山の葉っぱを長い間楽しめる様にペーストにしました。
火を通した葉っぱに塩とオリーブ油を入れて、
ブレンダーにかけるとペーストになります。
このペーストをベースに他の調味料や素材をプラスすれば、
ドレッシングやディップ、ソースなど様々な料理に使えると思います。
このペーストをベースに更にオリーブ油と塩を足して滑らかにし、
茹でたショートパスタに和えただけの簡単レシピです。
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試食が終わったところで、同会の石川敏之さん(江戸東京野菜コンシェルジュ)が、今話題の江戸東京野菜ジェラートの八王子しょうがミルクを出してくれた。
福島代表が何人かを指名して、意見や感想を求めていた。
私も、指名されたので、東光寺ダイコンの思い出を一言。
それは、平成2年に皇居東御苑内に大嘗宮を造営して執り行われた大嘗宮の儀に、庭積机代物として供納、東京の地域特産に南多摩では「東光寺ダイコン」を選び、栄町の和田恒雄さんが奉耕した。
当時、実行員会の事務局長をしていたので、宮内省まで皆さんをご案内した。
その他、区内からは「キャベツ」、北多摩からは「東京うど」、西多摩からは「椎茸」、島しょからは「天草」を撰んだ。
奥住さんのハウスに向かう途中に、そのダイコンが栽培された畑があったが、区画整理が済んでいた。
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和田恒雄さんが、特注の籠に乗せて供納したのを思い出す。
写真左が和田さん、右は地元JA東京みなみの朝倉巌組合長
左端が筆者。
スタッフとして、裏方をされた、北村淳さん(江戸東京野菜コンシェルジュ)、加藤英輔さん(江戸東京野菜コンシェルジュ)、上野剛さん(小城プロデュース・アートディレクター)ありがとうございました。