昨年7月、深大寺恒例の「夏そばを味わう集い」で、江戸ソバリエ協会のほしひかる理事長に紹介いただいた、料理研究家の冬木れい先生から、その後お手紙をいただいていた。
冬木先生は、平成27年から郷里、栃木市観光課の依頼で、「とちぎ江戸料理」というモードづくり、味づくりをされているという。
そこで、「とちぎ江戸料理」を食す旅行企画を組んだとかで、お誘いをいただいたもの。
栃木の名刺・出流山満願寺の初詣と、昼食には、名物の「いづる寒晒し一升蕎麦」を組み込んだ「とちぎ江戸料理」を用意していると云う。
江戸には全国から野菜の種が持ち込まれ、又江戸でできた野菜の種は全国に伝わったことなどから、地方を知ることは大切で、冬木先生の企画で、江戸ソバリエのほしひかる理事長も参加されると云うので、またとない機会だ。
蕎麦好きの納所二郎さん(江戸東京野菜コンシェルジュ協会理事長) を誘って出かけた。
栃木市から、バスで県道202号線を18キロ遡る。
大規模な石灰鉱山があることから、鍋山石灰企業群を抜けて、出流の山懐へ。
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昼食の「いづるや」は、先代の大塚時高が、巡礼の寺「出流山満願寺」へ向かう寂しい山里に、昭和38年に店を開いたと云う老舗で、現在では宿泊もできるとか。
ほし理事長の説明によると、この地は昔から良質の蕎麦が生産され、「出流」の名のごとく、石灰岩の山から湧き出る美味しい水が蕎麦打ちには欠かせないと云う。
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同店のそば打ちは、一本ののし棒で昔のまま丸く打つから、そばを切ると短いのや、長いのか出るのが特徴だとか。
平成二十九年一月十四日 辛丑
とちぎ江戸料理 特別メニュー
出流山満願寺初山詣 膳組料理
「とちぎ江戸料理」とはどんなものかと思ったら、
三か条が定められていた。
一、江戸期の料理本や
文献をもとに再現した料理
一、受け継がれてきた郷土料理や、
栃木ならではの食材を生かした料理
一、江戸のエッセンスを
感じさせる創作料理
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座付椀・生姜切りそば切り(左上)
肴・胡麻豆腐
煮物・八ッ頭、菜の花あしらえ、わかめ、梅酢の麩
八ッ頭は、人の頭になるように・・・、
春を待つ山里の食材だ。
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同店の大塚重夫社長の弟晴夫さんが、蘊蓄を語ってくれた。
旧暦の元日は「先勝」、節分も「先勝」で翌日が立春で決まっている。
「しもつかり」は、
「下野(しもつけ)国」からとか「清水かり」との説があると晴夫さん。
「しもつかり」の大根おろしは「鬼おろし」で、
この鬼おろしは自分で栗の木の股と、門松の孟宗竹で作ったとか、
門松に使うこの季節の竹は虫が喰わないので、菜箸なども作っている。
「しもつかり」には、大根おろしをベースに、酒粕、
節分の炒った豆と、鮭、人参などが入っている。
節分が終わった後の、
初午祭(今年は2月12日) に作って食べるものだという。
晴夫さんの話は、法話を聞いているようで聞き入ってしまう。
この店の、売りのようだ。
パリパリとした食感がたまらない。
千枚漬けのように鉋でスライスして塩したものだという。
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泥鰌のから揚げは、まず泥鰌に酒を飲ませて、揚げておいて、
お客さんに出すときに再度揚げて出しているという。
中央の生姜は、ホクホクした食感だった。
出流名物・寒晒し蕎麦(盆ざる蕎麦)
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これが「いづる寒晒し一升蕎麦」と云うもの。
蕎麦は、暮れの27日から30日まで打つが、
疲れていやになることもある。
そんな時、母親のトキさんは
「晴夫!、お客さんはうちの蕎麦で年越しを待っているんだから!」
と励ますそうだ。
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柿だるまは、干し柿を海苔で巻いて揚げたもの。
晴夫さんは、天にも昇るような気持ちになってもらいたいから、
栃木産「スカイベリー」を選んだとかで、
おもてなしの心が伝わってくる。
今回頂いた、いづるや独自の「とちぎの江戸料理」、
大変美味しかった。
「とちぎの江戸料理」はこれに限らず、
各店が三か条によつて、独自の「とちぎの江戸料理」を出している。
今回参加された皆さんは、日本国際薬膳師会の鷲見美智子副会長さんを始め、薬膳の方々が参加されていた。
中級食品表示診断士の福島里菜さん、ワイケイフーズの河野義夫社長、巣鴨で湯葉の創作料理「栃の木や」の内藤厚社長にもお会いした。
しかし、山の中だけに寒さはひとしお。
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坂東三十三観音霊場、関東八十八カ所特別霊場第十七番札所、
真言宗智山派出流山満願寺。
本堂での法話の後、
ご本尊の千手観菩薩を間近で、お参りさせていただいた。
追録
冬木先生から、帰りがけに栃木の伝統野菜「宮ねぎ」を戴いた。
私が伝統野菜に取り組んでいると云うので、
わざわざ取り寄せておいてくれたもので、 感謝です。
江戸時代から栽培されているもので、
栃木の商人が江戸に出向くときに持参したとの話。
10月に種を蒔き、翌年の5月に仮植し、8月に定植し
1年以上かけて育てられる。
「とちぎ地域ブランド農産物」で、
軟白部分が太く短いのが特徴でだから、別名「ダルマねぎ」。
この時期、甘さと食味が魅力だとか、
一見、下仁田ねぎに似ているが、大きさはひと回り小さいねぎ。
内藤厚社長の「栃の木や」では、取り寄せて出しているという。
宮ねぎの生産者は4人しかいないというから、
伝統野菜を次代に伝えることは栃木でも大変なようだ。
追伸
冬木先生は、NHK−BSプレミアムの新ドラマ「幕末グルメ ブシメシ!」の料理監修をしている。
このドラマは、参勤交代で江戸に単身赴任中の武士が、料理で難題を解決するほのぼの時代劇。
1話完結全8回で、放送は、1月10日〜毎週火曜日の23時15分から。