更科堀井を会場に、アトリエグーを主宰する料理研究家の林幸子先生と江戸ソバリエ協会、江戸東京野菜コンシェルジュ協会の四者が取り組む第6回「更科堀井 冬の会」〜更科蕎麦と江戸東京野菜を味わう〜が、2月7日、8日の両日満席で開催された。
前回の「更科堀井 秋の会」から始まった2年目、
今回で6回を迎えたが、更科堀井の河合孝義料理長は、江戸東京野菜への理解を深め、「江戸東京野菜」のポスターを店内に貼っていただいている。
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今回の食材は、
練馬大根の切干、亀戸大根、金町コカブ、馬込三寸ニンジン、千住ネギ、早稲田ミョウガタケ、青茎三河島菜、品川カブ、ノラボウ菜を、生産者の協力を得て用意した。
江戸ソバリエ協会のほしひかる理事長のあいさつで開会。
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2020年のオリンピックを控え、同協会が作成した江戸そばの食べ方とマナーについて説明してた資料を配布して説明された。
同種の資料は更科堀井でも発行していて、14ページの冊子を外国人のお客様に配布している。
恒例で更科堀井の九代目ご主人・堀井良教さんから・・・
当店は、創業200年で、200年前からメニューは決まっている業界で、あまり刺激がないままにやってきた。
江戸東京野菜と出会い、林先生にいろいろと試してもらって、今まで蕎麦屋になかったレシピに楽しくチャレンジしている。
生産者の方からもいろいろな食材を提供してもらっていて、蕎麦屋の新しい1ページになるような気がしている。
ソバは外国でもヘルシーな食材として認識されているが、それに野菜が加わるという良い関係を、林先生の料理技術が結びついて、新しいページが生まれる。ワクワクする会になっている。
林先生のこれぞ料理を学び、皆さんもお愉しみください。
今回の江戸東京野菜は、林先生から秋の会が終わったときに、練馬大根の切干を依頼されていた。
練馬大根は12月に沢庵漬にするために抜かれて干されてしまうことから、2月にはないので12月の段階で注文されたもの。
清水丈雄さんの亀戸大根、金町コカブ、渡戸秀行さんの馬込三寸ニンジン、浅草葱善の千住ネギ、
井之口喜實夫さんの早稲田ミョウガタケは、昨年、根株を掘り上げるときの状態が悪かったとかで、生育が遅れていて心配していたが、井之口さんの技術で間に合ったようだ。
岸野昌さんには、青茎三河島菜と、品川カブをお願いしていたが、品川カブの生育が進んで、大きくなってしまった。
ノラボウ菜は、季節的に少し早かったが、三鷹の冨澤剛さんが受けてくれた。
これら個々の野菜の物語についても、紹介した。
毎回、林先生が作った料理を再現できるように、お土産を用意しているが、今回は練馬大根の切干、
切干と云っても、生産者の渡戸章さんが自信をもって作っている大根チップを用意した。
林先生の料理教室「アトリエグー」の生徒さんたちに、毎回喜んでいただいている。

今回も白遊先生(ほし先生の奥様)が揮毫していただいた。
一、谷中生姜シロップの蕎麦湯割
練馬の生産者・加藤晴久さんは、初めて参加してくれた。
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国分寺の江戸東京野菜生産者・小坂良夫さんが昨年に続いて、自分で栽培した谷中ショウガを
シロップにしたことから、打ち合わせの段階で林先生に提案した。
今回、更科堀井の濃いそば湯に溶いて出してくれたが、甘酒のような味になって体が温まった。
写真右上、練馬大根のチップスに、馬込三寸ニンジンと昆布を一緒に漬け込んで「はりはり漬」にした。
甘酢漬けはそばつゆを活用して、パリパリした食感は、たまらなく旨く、お変わり自由で食べていただいた。
堀井さんから一言
早稲田ミョウガタケには、千曲味噌の「江戸甘味噌」を使いました。
江戸甘味噌は大豆の3倍ぐらいのコメを使っている、江戸で開発された味噌で、すごく照りがある甘い贅沢な味噌です。
戦後、米軍の統制で米麹が十分に使えなかったことから、戦後はしばらくの間使われなくなった。
米麹が統制から外れ、作られるようになった時には、消費者の嗜好が変わっていて人気がなくなっていた。しかし深みのある味わいですので、早稲田ミョウガタケを味わってください。
林先生からは
軟化栽培をしてあるので、黄色い葉先まで食べてください、と・・・
皆さん、江戸甘みそをベースにした、蕎麦味噌をつけて早稲田ミョウガをかじった。
生姜風味餡掛け
一、品川カブと金町コカブの揚浸し
生産者の岸野さんからは、畑に残っているのは大きくなり過ぎたからと出荷を断られたが、林先生は料理法で美味しく食べられるからと、金町コカブとの食べ比べができるように料理。
林先生からは
素揚げにしてあり、そばの掛け汁で浸してある。品川カブは形は大根のようだが、カブだということがわかり、金町コカブとの違いをお楽しみください。
お酒にも合う味です。
また、蕎麦と実と鴨叩きの餡掛け三河島菜巻きは、ひき肉ではなく鴨肉をたたいて、そば茶に入っている蕎麦の実を練り込んでツクネを作って、三河島菜で巻いている。
三河島菜の葉の色が変わらないように、さっと火を通してある。
肉がしっかりしているから、とても美味しく食べられるという逸品に仕上がりました。
お酒は、そば焼酎を更科堀井の濃いそば湯で割ったものを注文したが、これは旨い。
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更科堀井の牡蠣は三陸奥松島産で大ぶり、これを千住ネギたっぷりの衣にして揚げたもので、牡蠣とネギの相性が良く、ため息が出るほどおいしい逸品だった。
固定種の千住ネギ(浅草葱善)を更科堀井では使っていただいているが、揚げるとまたおいしく、千住ネギを楽しんでください。
堀井さんから一言
亀戸大根の葉を練り込んだが、本来の更科そばは細打ちだが、亀戸大根の葉を練り込むために葉が小さいと葉の香りがしないと云うので、河合料理長の判断で葉を大きめに切って、その分平打ちにしました。
そばで平打ちは珍しいが、そのようなことで平打ちにしました。
それを、亀戸大根を鬼おろしでおろしたものをそばつゆで、根も葉もお愉しみください。
野良坊菜ペースト泡は、「エスプーマ」を使ったが、スペイン語で「泡」、亜酸化窒素を使い、あらゆる食材をムースのような泡状にすることができる画期的な調理法として、注目を浴びているという。
堀井さんから一言
昨年、ニューヨークでプロモーションを実施しましたが、そこで使うためにエスプーマを購入したが、人気のために品薄で2ヶ月も遅れて間に合わず、
林先生のアイディアをいただいて、蕎麦屋としては今回が筆卸になります。
一生懸命に作りました。
癖のないノラボウ菜が、ムースよりもクリーミーな味わいで美味しくいただいた。
江戸ソバリエ協会のほしひかる理事長はフードボイスの蕎麦談議
第402話に「更科蕎麦と江戸野菜を味わう」を書いている。