総本家 更科堀井を会場に、料理研究家の林幸子先生の江戸蕎麦料理を食べる四季の会は、江戸ソバリエ協会と、江戸東京野菜コンシェルジュ協会の共催で実施しているが、先日、満席の状況で2日間にわたって開催された。
今回の食材については、事前の打ち合わせ会で、東京ウド、タケノコ、千住ネギ、奥多摩わさび(葉付き)、内藤トウガラシ、シントリ菜、伝統小松菜、ノラボウ菜、つるな 、木の芽、鮎蓼、明日葉、等の江戸東京野菜を提案した。
この席で、堀井良教社長から、更科堀井としてもこれからの季節、タケノコを使った料理を考えているとの話があった。
少し早めに、会場の更科堀井に着いたが、店の外に「江戸東京野菜 若竹そば」のチラシが貼ってあった。
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当ブログでは、河合料理長が、八王子の立川太三郎さんの竹林を訪れ、タケノコを掘ったことを紹介している。
その後、多摩・八王子江戸東京野菜研究会の福島秀史代表が流通を引き受けたことから、掘りたてのタケノコを2時間以内で、試作を重ねる林先生のアトリエグーと、更科堀井に届けていた。
林幸子先生は、打ち合わせの段階で、すべてを使ってお料理を考えてくれて、ほしひかる先生の奥様・白遊先生に御献立の揮毫を依頼した。
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春の会は、江戸ソバリエのほし理事長の司会進行により、始まった。
はじめに、更科堀井の九代目ご主人・堀井良教さんから、歓迎の挨拶・・・
昨年暮れ、小池百合子知事の指名で、江戸東京きらりプロジェクト推進委員会の委員をしています。
江戸スタイルや東京スタイルの良さを発掘して、内外に発信していこうというもので、東都のれん会から虎屋の黒川さん、神輿の宮本卯之助商店の宮本さん、刃物のうぶけやの矢アさん、それに元三越の社長大西さんなど知り合いがメンバーですので、今度、懇親会をやろうと話がまとまり、うちでやることになりました。
懇親会は、非公式なものですが、春の会で林先生にメニューを作っていただきましたので、この江戸東京野菜を使った料理を、皆さんに食べていただこうと思っております。
昔、故杉浦日向子先生と対談をしたことがありますが、江戸の良さはカエルの子はカエルだという。
いつもと変わらず、経済的な発展もせずに同じことを繰り返してきたことが、江戸文化の良さなんだと云う。
今、地球環境の保護と健康を重視する生活、いわゆるロハス、や、サスティナビリティー(持続可能性) の考えが評価されている。
ソバ屋としても、江戸の頃は、ぬき屋は脱穀するだけの仕事、臼屋は脱穀した蕎麦を挽く、そばを打つ者は昼の分を打ってしまえば、あとはブラブラしている。主人はおつゆを取ったら朝風呂に出かけてしまうなど、他人の仕事を侵さない。今で云うロハスな生活が江戸の生活で、それが江戸スタイルなんですね。
林先生が江戸東京野菜を使って考える料理には、そのような空気があるように思えます。
地産地消を含めて、地球環境に優しい、ロハスの考えがこれまで7回の四季の会を通して感じ、だから皆さんが参加されるのだと思いますし、それをお手伝いすることが出来ることは光栄なことだと思っています。
本日はゆっくりお楽しみください。
今回の食材について、一品ごとに説明をさせていただいた。
東京ウド(立川の須崎雅義さん)、タケノコ(八王子の立川太三郎さん)、
千住ネギ(浅草・葱善)、奥多摩わさび(千島国光さん)、
内藤トウガラシ(内藤トウガラシプロジェクト)、
シントリ菜、伝統小松菜(西東京の矢ケ崎宏行さん)、
ノラボウ菜(五日市ファーマーズセンター)、蔓菜、明日葉(築地・政義青果)、木の芽、鮎蓼(足立の宝谷實さん)に協力を依頼した。
林先生は、打ち合わせの段階で、メニューを決めていたが、常に皆さんを満足させようと、サービス精神旺盛で、試作をする中で、ぎりぎりまで考えて最終的に2日前に食材の数量が決まった。
林先生談
大竹さんの江戸東京野菜への愛が強くて、あれもある、これもあると、江戸東京野菜の提案をいただいているので、メニューを考えるのに苦労することが分かっているのに、全部受けてしまい、いつもより一品多くなりました。
三菜には、矢ケ崎宏行さんの伝統小松菜、シントリ菜、とJAあきがわの市川辰雄専務に依頼して五日市ファーマーズセンターから、のらぼう菜を送ってもらった。
会場には江戸東京野菜の生産者・加藤晴久さん、渡邉和嘉さん、沢庵を作っている村田千英子さんも参加されていた。。
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林先生談
青菜は葉っぱの部分だけ使いましたが、三菜となると青汁のようになってしまいますが、東京産甘夏の果汁と谷中しょうがのシロップが入っていますから、飲みやすくなっています。
メニューには江戸甘味噌漬と酒粕漬となっていますが、酒粕漬2種に変更しました。
豊島屋の酒粕は甘口でしたので、塩でキリッと辛口に(写真左下)、甘口はちくま味噌の江戸甘味噌をたっぷり使いました(写真右下)。
食べ放題にしましたので、後に出てくるウドなどにもつけて食べてみてください。
酒粕を使うと云うので、澤乃井の小澤恒夫社長は農大の先輩でよく知っているから頼もうと思ったら、堀井さんが、のれん会の豊島屋に頼むという。
のれん会とは、東都のれん会で、江戸の昔より明治初年にかけて創業された老舗54店が、戦後の昭和26年に結成発足していて、今では親戚のようなお付き合いのようだ。
更科堀井は創業1789年(寛政元年)だが、豊島屋本店は、1596年(慶長元年)、 江戸・神田鎌倉河岸で、豊島屋十右衛門が醸造業を始めた老舗。金婚は明治神宮のご神酒になっている。
江戸甘味噌ものれん会のちくま味噌。元禄初年(1688年)に深川永代橋際に味噌醸造を始め、乳熊屋作兵衛門商店としたのが始まり。
皆さんには、老舗の味を堪能いただいた。
林先生談
東京ウドの浅漬けで、小笠原の塩で味付けした。
更科堀井の出汁に内藤唐辛子を利かせて2時間漬けました。
出汁の香りがふわっとしてきて、びりとして・・・・、
出汁の効いた浅漬けは少ないので、お楽しみください。
八王子筍と伝統小松菜に、田舎蕎麦のサラダ、鰹節と粒マスタードのドレッシング。
蕎麦好きが待っていた初めてのお蕎麦は、冷たい田舎そばのサラダ、
林先生談
当初、木の芽シロップを考えていたが、使っていない。
筍と相性がいいのは鰹です、そこでドレッシングには酢と醤油とオリーブオイル、それに粒マスタードと粉鰹を入れています。
伝統小松菜を入れて、サラダ仕立てにしてあります。
林先生談
鴈擬は、お豆腐に、筍の擂りおろし、それにつなぎにそば粉を使っています。
さらに、筍をころころに切ったものも入れ、それを揚げていますから、揚げた筍の香ばしさが楽しめます。
真ん中には、江戸前のアナゴも入れてもらっていますから食べて楽しいものになっています。
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筍の蕎麦掻鴈擬は、林先生の面目躍如。
筍をつりつぶして、蕎麦掻で丸め、一部は筍をころころに切ったものも加えたことで、食感が素晴らしい。
せり科の明日葉の味わいも、アクセントになっている。
林先生談
つる菜は、椀ダネとしてちょっと添えるような使い方をするものですから、掛けそばでそのようにしています。
筍は穂先の柔らかいところを、茹でずに素揚げにして乗せています。
筍の穂先は甘みがあるんです。姫皮が付いたものが香ばしいところを楽しんでください。
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林先生談
蕎麦に、鮎蓼を練りこんで作っていただけるというので、最初に思い浮かんだのが、蕎麦を清流に見立てて、そこに薄衣の稚鮎を揚げて乗せたら絵になると思いました。
しかし、更科堀井では、蒸籠の上にてんぷらなどを乗せることはしないというが、先生が云うのならと、無理が通ったもので、蒸籠の上の景色をお楽しみください。
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初参加の、大浦美鈴さんは、さっそく写真に撮って、ソーシャル・ネットワークで友人に・・・・
林先生談
お料理にした場合、夏柑ではしっくりしませんでしたので、レモンにしました。
千住ネギを甘く煮て、スイーツにしました。葱の香りはしますが、食べるとスイーツというものです。
一気に甘く煮るのではなく、薄甘い汁で煮て、いったん冷まし、少し濃くしてというようにじっくり甘くしていきましたから、ジンワリと甘くしていきました。
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最後に河合料理長が挨拶されたが、
普段やらないことを勉強させていただいているとして、
「蒸籠の上に稚鮎の天麩羅と鮎蓼を乗せるなど初めての経験でしたが、良い景色になったと思っています。」と・・・
林先生からのらぼう菜の料理の仕方が説明された。
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葉と茎を分けて茹でるように。
葉はさっとゆでるが、茎の方はもう少し時間をかけ茹でる。
癖がない野菜で茎の方はアスパラガスのような食べ方でもよい。
追伸
次回「夏の会」は、
8月8日(火)、9日(水)の18時から更科掘井で開催いたします。
追録
江戸ソバリエ協会ほしひかる理事長から
平成29年度 第14回 江戸ソパリエ認定講座のご案内がされた。
江戸東京野菜コンシェルジュ協会納所二郎理事長からは、
「はじめての江戸東京野菜講座」の案内がされた。