今年の2月だったか、三鷹市では「三鷹大沢わさび」の報告会
「わさびサミット」を開催し、三鷹大沢わさびの歴史と
その重要性について報告する、としていた。
また、三鷹大沢わさびと同様、国内に僅かに残された在来種の保存に
取り組む地方の団体等とも交流し、日本の固有種である「わさび」の
食文化の継承に取り組む、と伺っていた。
しかし、新型コロナの感染拡大で、延期となっていたもの。
主催者の河村孝三鷹市長がご挨拶。
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大勢の方々が参加されたので驚いておられたが、江戸ソバリエ協会の
ほしひかる理事長に、松本一夫理事、
江戸東京野菜コンシェルジュ協会の松嶋あおい理事も参加されていた。
当日は新型コロナの感染拡大で山根先生は岐阜からzoomで参加された。
注目の「三鷹大沢ワサビ」も展示された。
山根京子先生(岐阜大学准教授)
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わさび研究の第一人者。2005年からわさびワサビ研究を始め、300地点
以上を調査、収集した系統を実験室で栽培している。
DNAや辛味関連成分を調べ、ワサビの来た道や起源、進化、
歴史を調べ、保全活動も・・・。
三鷹大沢ワサビは、これまでにないタイプということが分かった。
全国ワサビ生産者大会の品評会の審査員を担当。
ワサビ生産が地球温暖化と、生産者の高齢化のダブルパンチで危機を
迎えていると、今年2月のニューヨークタイムス紙に、
7月にはロイター共同通信が発信している。
著書『わさびの日本史』が辻静雄食文化賞を受賞している。
久保充さん(大沢の里古民家ボランティア)
令和2年に行ったわさび報告会に初参加。その日にボランティアへ
登録し、三鷹大沢わさびを守るための活動に従事。
大沢の自然環境に魅せられ、古民家でのイベント準備にも
関わる若手のホープ。
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山根先生の研究成果が発表されてから、この貴重な
三鷹大沢わさびを守るためのボランティア活動が報告された。
三鷹市に寄贈された古民家のワサビ田の整備に取り掛かっている。
山根京子先生(岐阜大学准教授)
三鷹市生涯学習課より「ワサビのDNA鑑定をしてほしい」と
依頼があった時、山根先生は内心
「どうせいつもの栽培品種でしょう?」と思ったという。
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東京のワサビは奥多摩ワサビで山間部にあるが、都心に近い
郊外の三鷹市大沢に奇跡的に江戸の頃の山葵が残っていた。
国分寺崖線の湧水を利用したワサビ田は、今は生産されていない。
山根先生は、栽培していた箕輪さんから栽培されるに至った歴史を
聞いて、伊勢から岐阜の山中まで捜索を実施、三鷹大沢ワサビの
母系とDNAが一致するワサビを岐阜で発見したことで、
岐阜〜伊勢〜三鷹市大沢のルートが明らかになった。
三鷹大沢ワサビの保全は環境と遺伝資源保全のモデルになり得る
未来を担う子供たちへ
5 各地の取り組み紹介
(1)京都府南丹市芦生わさび【オンライン参加】
下村眞さん(芦生わさび生産組合)
美山町の美しい山並みに囲まれた山村生活でわさび栽培に取り組む。
伝統のわさび祭りは今年南丹市の無形文化財に指定された。
芦生わさびを守るため毎日山の中へ通っている。
自生わさびを増やすのが夢だとか。
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美山町芦生の熊野権現神社に伝わるワサビを食べる神事
(ワサビの葉や茎を食べる)に伴い、地域住民がポットに
種を蒔いて、ポット苗を育てている。
ワサビ田ではなく、杉林の中で栽培している。
近年、季節限定「葉わさびの醤油漬け」が加工販売されている。
(2)石川県白山麓わさび 【オンライン参加】
風一さん(白山麓わさび生産振興会)
白山麓風のわさびは通称モチワサビと呼ばれ、粘りの強さと味の濃さは
日本一といわれている。古くから独自に栽培化を進め、他に例のない
在来種の保全のため、朝から晩まで山にこもる日々。
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山根先生が2020年に、これまでのだるま系、真妻系等とも違う、
モチワサビのDNAだった野生種を発見したもの。
井草長雄さん(奥多摩わさび鳩里庵)
伝統ある奥多摩のわさび田で、雄大な自然を活かしてわさび栽培を
行っている。2019年の台風19号の豪雨による被害の回復を、鳩ノ巣の
山小屋(鳩里庵)を拠点に楽しみつつ作業する日々だという。
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当ブログでは、奥多摩ワサビの専業農家として千島国光さんを
紹介してきたが、井草さんも「奥多摩ワサビ塾」で、千島さんに
栽培を学んだようだ。
昔の使われなくなったワサビ田を復活させたりもしている。(写真上右)
三鷹大沢ワサビを分けてもらい、試験栽培を行っている。(写真下左右)
写真下右は、右の株は三鷹大沢種だが、左の真妻種と比べると、
同じ時期に定植したのに、生育に差が出ている。
参考、2020年の資料を持っていたので紹介する。
昭和女子大学リーダーズアカデミー ”わさびアンバサダーチーム” の
「本わさびをめぐるお話」
大沢ワサビの増殖を目指して
茎頂培養にも挑戦していると、3年生の代表が発表した。
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都立農業高等学校 宍戸寿教諭
東京とは思えない深山幽谷の風景が広がる神代農場に、古くからある
”わさび田” で、生徒たちが「三鷹大沢わさび」の栽培を行っている。
茎頂培養にも挑戦したりと、伝統わさびの復活を目指して邁進中。
宍戸先生は、山根先生に喜んでもらえるだろうと、
三鷹大沢ワサビに花が咲いたと、写真を映し出した。
参考・2016年頃の神代農場
大竹道茂(江戸東京・伝統野菜研究会代表)
今回の発見は、江戸東京野菜の復活に取り組む一人して
喜びに堪えない。
古民家の寄贈を受けた事から、その歴史を調べることはわかるが、
ワサビ田のワサビのDNAまで調べようとは
普通では行わない。まさに三鷹市生涯学習課のクリーンヒットだ。
と申し上げた。
江戸東京野菜の、奥多摩ワサビは「従来の栽培法等に由来する野菜」と
云うことで、奥多摩の自然環境を保全するためのワサビとして
評価されている。
「三鷹大沢ワサビ」は江戸時代のワサビで、他では絶えてしまって、
その物語は次代に引き継ぐうえでも、素晴らしい。
2021年11月には、日本農業新聞が、動画でも紹介している。
山根先生の「ワサビの来た道」を聞いていて、奥多摩ワサビの来た道が
分かったような気がした。
奥多摩ワサビは、文政六年の武蔵名勝図会に、海沢村に山葵として
「この地の名産なり、多く作りて江戸神田へ出す」とあり、
「これより西に至る村々にても作れど・・・・」とあることから
戦国の頃から交流のある甲斐の丹波山村や小菅村から
伝わったのではないかと。
かつて、小河内の奥地、留浦のワサビ農家を訪ねたことがあったが
あの辺りに、残っていないだろうか
武蔵名勝図会には檜原村の産物に、山葵が掲載されている。
浅田修平さん(そばごちそう門前)
わさび栽培を行っていた時代の箕輪家と交流があり、三鷹大沢わさびと
深大寺そばのマッチングを計っておられる。三鷹大沢わさびの味を
知っている貴重な証言者。門前のそばは絶品とある。
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下原さんと山根先生は、深大寺の浅田さんのお店を訪ねている。
また、浅田さんの店では昔都立農業高校神代農場の先生から頼まれて、
農場の虹鱒を出していたことがあり、松本清張が好んで
食べに来てくれたという、話をされた。
それだけに、三鷹大沢ワサビが、都立農業高校のワサビ田で収穫され、
深大寺の蕎麦屋で出せることを願っていると話された。