
(写真提供 鴎外荘)
「池波正太郎の世界」は、女流講談師の神田蘭さんの登場で始まる。
ドラマ鬼平犯科帳のテーマ曲に乗って登場の蘭さん、男装の美人剣士・佐々木三冬の若衆姿で日本舞踊を舞った後、会場から笑いを取ってから、やおら講釈台に向かう。
「・・・池波正太郎原作「剣客商売・陽炎(かげろう)の男、読み聞かせの一席、最後までお付き合いの程・・・・」
「小さい檜造りの湯船に、陽炎が揺れていた・・・・。」
美人講談師の誉れ高い神田蘭さん。
時々三枚目を演じて笑いを取っていたが
陽炎の男では、メリハリの利いた語り口で、聴衆を池波正太郎の世界に引き込んでいき、佐々木三冬を演じきる。

江戸情緒を味わっていただきたいと、「振袖さん」の千代さんと恵さんが日本舞踊を踊ってくれた。
女将・中村みさ子さんからは、会場となった鴎外荘(舞姫の間)についてご紹介。
「鴎外荘旧邸は、28歳で結婚した森鴎外が新婚当初から過ごした家屋です。
この地でドイツ留学の思い出を書き綴った名作「舞姫」が執筆されたことから、
「舞姫の問」と名付けられました。
その舞姫執筆から今年で120年をむかえます。
鴎外はこの地において、「うたかたの記」の小説や、「於母影」を出し、文壇に確固たる位置を占めました。
近代文学史上、画期的な活躍をする基礎を築いた地でもあります。」
「この家は築125年でございます。 釘を一本も使っていない建物で、三つのお部屋を襖で区切るようになっていまして、一番大きいお部屋の天井は杉の一枚板で、樹齢700年の材木を使っています。
宮大工さんの心意気で三つの部屋の天井はデザインが少しずつ違います。
この家のこだわりは天井ではなく、細い柱です。宮大工さんは、江戸時代に生まれた江戸ッ子でして、あんまり大きいのは「野暮!」。
細くて、華奢なものが「粋な世界!」で、池波正太郎の世界と似ています。
この柱には一つも節がありません。庭に面した客間ですから宮大工さんの心意気の現れで、日本の文化です。
森鴎外はこの家から無縁坂を登りまして、不忍池を回って蕎麦屋の蓮玉庵(れんぎょくあん)でソバを食べてこの家に帰ってくる。
それが晩年の作品「雁」の舞台になったと云ってもらっています。」

当日、江戸料理に使われた食材は、東京の農家が生産したもの。
三鷹・星野さんの「寺島ナス」、足立・内田さんの「銀真桑」、三鷹・岡田さんの「白玉蜀黍と白茄子」、立川・須崎さんの「東京独活」、小平・梅室さんの「小玉西瓜と胡瓜」が使われた。

森山総調理長が「池波正太郎の江戸料理を創る」を参考に腕に縒りを掛けた料理は、試食した時にご紹介している。
この度は、特別にご招待いただき、ご挨拶の中で女将は「江戸東京野菜の大竹が来ている」と私のブログなども紹介いただき、また森山総調理長からも「大竹に協力してもらった」と過分なる紹介をいただいた。 恐縮です。

総調理長が自信作のお料理を一つひとつ紹介した。
江戸情緒と素晴らしいロケーションの中で食べる、森山総調理長の江戸料理は絶品で、お客さまも、すっかりくつろいで、江戸料理を楽しんだ。
八月いっぱい毎週金曜日の夜開催の、江戸料理「池波正太郎の世界」をご期待、お楽しみください。