勤労感謝の日、小雨だったが、午後からは上がるだろうと明治神宮に出かけた。

今年も明治神宮の本殿回廊には、全国から奉納された農産物が並んだが、明治神宮農林水産物奉献会の皆さんが奉納した宝船は圧巻で、南神門の両サイドと廻廊には8艘が並んだ。
野菜の宝船の歴史は、江戸時代に遡る。
神田市場の若い衆が、小遣い稼ぎに大根やニンジン、漬菜等で宝船を作り、大店( おおだな )では店先に飾って新年を祝った。
当時の宝船は、大きくても1b程度のものであったが、今日では船に乗せる品種も多くなり、宝船自体も大きなものになっている。
この野菜は、後日施設等に明治神宮から贈られることから、沢山の野菜が積み込まれている。

鎮座90年を祝い、11月1日からのお祭りに奉納された宝船をクリックする
このような宝船が何艙も並ぶ光景は、他に類例は無く壮観そのものなので、皆さんにご紹介をしている。
この度は、東京シティー青果の石川勲会長から、「23日は、午後から家内と見てきましたよ、すごいものですね」と電話をいただいた。
実は、宝船を奉納している明治神宮農林水産物奉献会には、現役時代に関わったこともあり、毎年この行事には顔を出している。
ここ数年、等々力農振会の皆さんが、根深ネギの「大束まるき」を奉納していた。
これは、ネギ農家が豊作の感謝をこめて奉納する伝来の形で、写真は、江戸の頃から伝わる「まるき方=束ね方」だ。
「ネギ農家の美学」である。
今年は天候不順で収穫が思わしくはなかったのか、奉納は宝船形式だったのが残念だ。
明治神宮農林水産物奉献会(前身は足食会)は、戦後の我が国が食糧不足に陥っていた時、食糧の増産に励んでこの危機を乗り越えようと、明治神宮を拠り所に結束した東京の農家が、農産物を奉納するようになった組織。
神宮では奉納された農産物を廻廊に展示したところ、参拝した全国の方々が参考にするなど、農家の生産意欲が向上したとの歴史ある行事で、現在の「実りのフェスティバル」の元になったものである。
平成14年に、これらの歴史をまとめた「明治神宮農林水産物奉献会創立三十周年記念・都市農業に息づく心」(A4版184頁)を編纂させてもらったから、奉献会への思いも人一倍強い。
神宮で久しぶりに、明治神宮国際神道文化研究所主任研究員の今泉 宜子さんにお会いし、立ち話だったが長いこと時間をとっていただいた。
今泉さんは御社殿復興50年記念「明治神宮 戦後復興の軌跡」(鹿島出版会20年10月発刊)を執筆された方で、
奉献会の記念誌を読んだと云って訪ねてこられたので、お話したことがあった。
著書には、「復興を支えた心意気」の項で、「野菜に託した祖国の未来」「都心の篤農家達が新嘗祭の危機を救った」として奉献会のことも書き込んでいただいた。
最近は、第二弾として「明治神宮造営者たちが見た西洋」というのがテーマだそうで、渋沢栄一、林学者・本多静六、都市計画家・折下吉延等、明治神宮造営に携わった主要人物らはそのほとんどが洋行経験者であるということで、西洋での足跡などを調べて、来年12月頃には出版を予定しているという。
楽しみだ。
12月に再びフランスで、引き続き研究を継続すると伺った。 さらなるご活躍をお祈りいたします。