「このたび独立行政法人 科学技術振興機構主催のサイエンスパートナーシッププロジェクト(SPP)に”江戸東京野菜の遺伝子レベルでの比較と連作障害について”の講座名として、今年度初めての応募でしたが選んで頂くことができました。」
との電話をいただいた。

その後、担当の成栗里美先生からもメールをいただき、苗やタネの調達方法などについての相談や、江戸東京野菜の学習についても協力依頼があったので、4月30日に科学部の皆さんにお話をさせていただいた。(写真をクリックする)
同校では、「江戸東京再発見コンソーシアム」の江戸野菜の周知拡大のための地盤作り事業に取り組んでいて、インターネット上に掲載されている内容が校内に掲示されていた。

昨年までは、生徒銘々が伝統小松菜を栽培していた。
同校に伺って科学指導の鎌田卓哉先生からSPPについての説明を伺ったが、先生からは、作物選定でいくつかの提案があった。
その中から、伝統小松菜と寺島ナスの手配について、JA東京むさしの農業後継者グループのリーダーの一人、高橋金一さんにお願いしたが、合わせて栽培キット等も手配してくれた。

遺伝子レベルの研究だが、
伝統小松菜(固定種)と、市販の小松菜( チンゲン菜と交配種 )の比較。
ナスでは、寺島ナス(蔓細千成=固定種)と千両ナス(交配種)を選定したが、古いタイプのナスと新しいタイプのナスの比較は面白い。
この遺伝子レベルの研究指導は、東洋大学理工学部生体医工学科の堀内城司教授にお願いしていると云う。
「江戸野菜」と「現在の野菜」の遺伝子解析、電気泳動染色体の違いによるタネの違いについて勉強し、
@ 江戸東京野菜である伝統小松菜と寺島ナスの遺伝子解析の比較・・
A 市販の小松菜がどのような中国産植物との交雑によって生産されたかを、様々な中国産アブラナ科野菜の遺伝子解析をすることによって特定する・・・。
B 寺島ナスの連作障害に関して、来年度栽培時に連作障害を起こすかを調べるための土壌解析もすると云う。
江戸東京の伝統野菜に興味を持ってくれたことで、ここまで研究が広がることは有難く、興味深い。
生徒さん方の報告を、江戸東京野菜に関わる一人として、楽しみにしている。
日本橋馬喰町にある同校の裏(北側)を神田川が流れている。
神田川を遡上ると、そこには江戸の頃から神田市場があったので、鉄道が発達するまでのあいだ、この河川は農産物流通の幹線水路となっていた。

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また、両国橋の北には、隅田川に注ぐ神田川河口(左上)が。
神田川を遡上ると船宿があり屋形船が係留されている(左下)。

かつて料亭が立ち並び、柳橋の芸者衆で賑わったこの辺り、創業明治14年、佃煮の老舗「小松屋」がある。
船宿から始まったが、料亭のお土産にと始まった江戸前の魚介類を使った佃煮が評判になり今に伝える。
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柳橋の袂、両岸に「小松屋」の佇まいがあり、佃煮は屋形船のお客さんに評判だ。
同校のある日本橋馬喰町2丁目には、郡代屋敷跡があったところ。
同校は2009年に新校舎が完成したが、発掘調査で出てきた石垣石が校舎の一角に展示してあった。
江戸からの歴史に包まれた中にある同校が、江戸東京野菜に取り組むこと自体に意義がある。