野菜と文化のフォーラムが実施している「野菜の学校」のスタッフで青果商の、高橋芳江さんから電話があった。
東京都青果物商業協同組合が実施している、青果商の後継者を育成するための勉強会、「八百屋塾」で、江戸東京野菜について話してくれと云うもの。
高橋さんは、昨年西東京市の新倉ファームに案内したことがあり、良く知っている方なのでお引受けした。
「八百屋塾2011」は、実行委員長(写真右)の関澤健氏 (東京都青果物商業協同組合本部青年会会長・和泉青果商店店主)の挨拶で始まった。
司会進行は、写真左の西沢好晴氏(有限会社・三金店長)、だが、私の紹介は、高橋さんがしてくれた。
これまで、消費者や食育を進めている方々等に「江戸東京野菜」の話をしてきたが、消費者と対面の商いをしている、青果商の方々に江戸東京野菜の話をする機会はなかった。
いつか知ってもらう機会があればと願っていたが、それがめぐってきた。
講演写真は草間壽子さんが撮って送ってくれたもの
今回、お引受けしたことで、また、新たな出会いがあった。
開会前にパソコンの準備をしていたら、「大竹さんですか! 」と声をかけられた。
日本橋の支部長をされている、高木正之氏(同組合理事)だ。
お話だと、日本橋から江戸東京野菜をブランド化したいと云うことで、最初に江戸東京野菜に注目してくれた、割烹「日本橋ゆかり」の野永喜一郎社長に、「江戸東京ゆかりの野菜と花(現絶版)」の本を紹介したのが高木さんだったと云う。
江戸東京野菜の恩人の一人だのようだ。
秋葉原の同組合会議室に、旬の野菜、ナスなどが集められていた。
参加者は、いっぱいの50数名。
青果商の方に知っておいてもらいたいことが沢山あったが、限られた時間だったので、お話しできないことも沢山あった。
青果商の関係では、「品川カブ」を普及しながら品川区の町興しに取り組んでいる、マルダイ大塚好雄商店の大塚さんの話をして、青果商の方々に、江戸東京野菜を通しての町興し、地域興しなどにも取り組んでもらいたい旨のお願いもした。
私の次は、市場からの報告。
八百屋塾だけに、集められた野菜の価格等、野原秀司氏(東京青果株式会社・個性園芸事業部副部長)から、説明があった。
-thumbnail2.jpg)
賀茂ナスの祖先とも言われる 「吉川ナス(写真左)」 〜伝統と歴史の黒い宝石〜
福井県鯖江市から産業環境部「特産づくり応援室」の青山英彦室長と徳橋圭吾参事がきて、鯖江市の取組について説明があった。
「吉川ナス」は1000年以上もの歴史を持ち、一説では加茂ナスのルーツとも言われている。
以前は福井県のほぼ中心、鯖江市旧吉川村で栽培されていたが、現在では鯖江市伝統野菜等栽培研究会に所属する農家が生産に取り組み、12名の会員でその歴史を守っている。
身が固く、煮崩れしにくいのが特長。1Cmほどの輪切りにし、甘味噌をぬって田楽にしたり、天ぷらにして食べると絶品。
「絹かわなす」は愛媛県の伝統野菜で、米ナスのような形状だか、なめらかな舌触りで、人気の高いナス。
クリックすると、油をひいて焼いた、「吉川ナス」と「絹カワナス」。
-thumbnail2.jpg)
「雑司ヶ谷ナス(左)」と「寺島ナス(右)」
クリックすると、油をひいて焼いた、「雑司ヶ谷ナス(左)」と「寺島ナス(右)」

長野県の「小布施ナス(左)」と新潟県「長岡巾着ナス(右)」
クリックすると、蒸しナスの「小布施ナス(左)」と「長岡巾着ナス(右)」
食べ比べは、進行役が指名で何人かに、感想を聞いていたが、ボリューム感のある「吉川ナス」、「絹カワナス」に注目が集まっていた。

「寺島ナス」と「雑司ヶ谷ナス」についても感想を求めたが、お一人が、私の手前か遠慮がちに、寺島ナスは皮が硬かった。
昔のナスはどうして食べていたのか、と云う質問も出たが。
今のように柔らかいものばかり食べている人達にとっては、硬いかもしれないが、昔は皮をむくなり、加熱するなりの方法があったと説明、これがこのナスの特徴だとお答えした。
また、お料理を担当された料理研究家の上原悠子先生(写真右)からは「寺島ナスは皮が硬いんですが、中はトロットしていて、焼きナスに向いていて、とっても良いと思います。」とアドバイスを頂いた。
また、写真左の杉本晃章氏(同組合理事で、杉本青果店代表)は、
皮が硬いと云う話しになったから、と前置きして「長岡の巾着ナスは焼かないで、全部蒸す、ナスを焼く文化は東京の食文化だ、油を引いて焼く。
今は、実がスポンジでフカフカの柔らかくまずいナスだから売れない。実の締まりの良いのは伝統ナスの特徴だから、これならお客さんもわかってくれるはずだ」と・・・
-thumbnail2.jpg)
長野県天龍村の幻の巨大ナス「ていざなす」
クリックすると揚げびたしの「ていざなす」(左)と交配種の「千両ナス」は埼玉産(右)。ていざなすは、揚げびたしにする過程で、色が抜けてグリーンの皮になった。
「ていざなす」は、1887年(明治20年)頃から、田井澤久吉さんが栽培を始めた事から「たいざわなす」と・命名されたが、地元では親しみを込めて「ていざなす」と呼ばれてきた。
長野県の最南端、天龍村で120年以上前から栽培されてきたが、自家消費されほとんどで、他に出回る事はなかったが2007年「ていざなす生産者組合」が発足し、同年「信州の伝統野菜」に選定され、2009年に商標登録された、希少価値の高い野菜です。
お問い合せ 塩田 090-4707-1714
山形県JA鶴岡の営農指導員・大井欣哉さんは、だだちゃ豆と民田ナスを持って来られた。
大井さんをクリックすると「だだちゃ豆」
「だだちゃ豆」は、JA鶴岡の主力産物。今年は6月と8月収穫前に集中豪雨でやられて収穫量は半減してしまった。
この豆、20年前までは一軒の農家が細々とつくってきた在来野菜だと云う。JAのタネ採り部会が責任を持って採種しているもの。他の地域でつくってもこの味が出ない。鶴岡にあった産物だと云う。
サファイやなすと山形の「民田ナス」
民田ナスは地元では、買う人がいないし、また、売れない作物だとか。
鶴岡の農家で殆どの家が自家用(漬物用)につくっているからで、自家用の漬物は、各家で全て味が違い、自慢し合っている、鶴岡の食文化だと云う。
JAに出荷される民田ナスは100%、地元の漬物屋さん向け。
2009年、2010年と山形大学の江頭宏昌先生にお世話になったが、昨年、季節は秋だったが鶴岡で伝統料理を頂いたのを思い出した。
休憩時間で同組合・葛飾支部長の浅賀隆夫氏と名刺交換、葛飾区東金町でご商売をしているとかで、地元葛飾の伝統野菜についてお話をさせてもらった。
金町コカブや金長ネギなど、また育種家・故長谷清治氏についても詳しく、地元の伝統野菜をしっかりと残したいと語っていた。
また、前出の、杉本理事も、葛飾区水元で、数人の農家に依頼して「亀戸ダイコン」を作ってもらい、昔からの荷姿で売ってもらっているなど、心強い話をお聞きした。
今回の、皆さんとの出会いも、素晴らしいものだった。
高橋芳江さん、お招きありがとうございました。
農経新聞の鹿島です。
とても丁寧に取材されていて、(自分が)少し恥ずかしいです…。
寺島ナス、雑司ヶ谷ナスともに、八百屋塾で初めて食べました。寺島ナスは皮がかたいという声もありましたが、私はパリパリとした皮と、果肉のやわらかさ、甘みのコントラストが面白いと思いました。また、私は豊島区に住んでおり、雑司ヶ谷は散歩コースでもあるので、雑司ヶ谷ナスの今後の動向にとても期待しています。
今後もよろしくお願いいたします。