2011年09月09日

「野菜の学校2011」第5回 兵庫の伝統野菜・地方野菜


早めに会場に着いたら、すでに講師の山根先生は見えていた。早速名刺交換をさせていただいたが、

山根先生は、私の名刺を見るなり、「江頭先生( 山形在来作物研究会会長 )から聞いてます。本も読ませてもらいました」と云われてしまった。
兵庫県の在来種のタネを守り、食文化を後世に伝えようとされていることは、存じていたのだが、機先を制されてしまった。マイッタ・・



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「種」から思うこと    山根成人(やまねしげひと)氏

・残りの人生をどうするのかキーワードは「脱金」と「農」
 「生まれてきてよかった」と思えることが、本当の豊かさではないだろうか?。
破壊と荒廃に加担してきたが、最後は「本当の豊かさ」を感じたい。そのためには………。
 「自分は何を残せるのか」。お金も資産ももちろん大事なものではあるが、目の前の親族のためである。せめて祖先が営々と築いてきた「文化の伝承」の端くれでも担えないか。
 「脱お金」。お金から少し離れてみる。すべての事象にお金のレンズを当ててみる。お金に関わるほど「不足」の世界に埋没する。 「知足」を感じ、取り込むより、むしろ「与えられて得られる充足感」を味わう………真の「豊かさ」だと思う。
 「農に親しむ」。「もう十分自分を生きさせてもらった」後は最低自分の家族の食物を育て、健康に生き、若者への負担を減らす。剃那的な楽しみから心底からの歓びを創り出す。
 生命の基は食料。食料の基は「農」。農の原点は「土」と「種」。種と畑は男と女。「種の自給は食料の自給」の大本である。その「種」が今「戦略」の最先端に利用されている…‥…・現実に。

プロフィール
 「ひようごの在来種保存会」代表。1985年より有機農法による「山根農園」、1986年より自家採種を開始。食糧の県内自給をめざし、その根本を「県産種子の自給」におき、種を採り続けることの大切さ、種採りは食文化を支えていることを訴えている。現在、「ひようごの在来種保存会」会員は約700名。
 著書に『種と遊んで』(2007年・現代書館)がある。

兵庫の在来種保存の動画配信中



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兵庫の伝統野菜・地方野菜を使った料理は、調理担当の領家彰子さんから説明があった。。



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八ちやんなす 

八ちやんなすは生産者の黒田八郎さんの名前からとった名前。八郎さんの父上が、行商の人からタネをもらって作り始めたのがはじまり。現在では60人ほどの農家が栽培している。

 皮が薄く、実は撤密。先がぴゅっと飛び出ていて、ヘタの周りが白くなっているのが特徴。色はやや薄めで暑くなるとボケた色になりやすい。


焼く、揚げる、煮る、漬物、妙め物など何にしてもおいしいなす。
黒田さんのおススメは浅漬けで、朝漬けて夕方、夕方漬けたら朝に食べる。生蓑醤油をかけるとおいしいとのこと。
 なすは油を使って高温で調理すると、色が鮮やかになる。これはアントシアン色素が100℃以下の加熱では変色や退色しやすいが、130℃以上の高温では色素が安定し、きれいな紫色を呈するため。
今回は、「八ちやんなす」は田舎煮。(ナスをクリックする)、


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別珍ウリ
 ウリ科。まくわうりの品種のひとつ。
 果皮がビロードのように濃緑色で、果肉が黄色く、メロンのような風味があり、東播地域だけで栽培されている、非常に珍しいウリ。「ぺっちん=別珍」は綿を横ビロード織りしたパイル織物のこと。
主な産地は加古川市、明石市。6月上旬から9月下旬が収穫時期。
浅漬けは”明石の夏の風物…好’として地域の人々に愛されている。

昔は生食用として栽培されていたが、今は、漬物専用として栽培されている。
大部分は浅漬けとして食され、果肉が黄色っぼく、少し甘みがある漬物。
完熟度によって味が異なる。中が鮮やかな黄色に完熟したものは、メロンのように甘く香りも良く、そのままでも、漬物でも、甘いうりとして食べられる。中の白いものは甘味が無く、”苦い”。しかし、これを漬物にすると苦味が抜け、絶品の漬物になるといわれる。
最近ではスライスしてサラダのような食べ方も提案されている。
今回は塩もみ、(ウリをクリックする)



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御津の青ウリ
 ウリ科。シマウリ群の黒門系。黒門音大縞瓜。
 約30年前に、愛知県犬山の「青うり栽培」を視察研修してから導入された。
 原産が中近東の砂漠地帯であること、また江戸時代から西播地域の瀬戸内海岸沿岸ではウリ栽培をしていたことから、御津の干拓地の砂地圃場で栽培されている。
 淡緑の果皮に白いシマが入っている。長円筒形で1kg前後の未熟なものを収穫する。
6月中旬から9月にかけて収穫される。

 浅漬け、粕漬けなどに加工される。
 夏場は大根のかわりに、刺身のつまなどにも利用される。
今回は、みそヨーグルトで浅漬け



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姫路れんこん


江戸時代になってから。 姫路市の南西部、大津区や網干区、たつの市御津町一帯。大津地区へは90年ほど前の大正時代に山口県から苗を持ち帰って導入されたのが始まり。
大津れんこんなどの名称があったが、最近姫路れんこんに名称が統一された。
収穫は正月用の引き合いがある年末にピークを迎えるが、夏に始まり翌春まで続く。

れんこんは穴があいていて見通しのよいところから、お正月の縁起物としておせち料理に使われている。
 皮をむき、加熱して食べる。アクが強いので、切り口が空気に触れると白色から茶色に変色する。
すりおろして団子、蒸し物、揚げ物などにするとモツチリ、煮るとムッチリ、さっとゆでたり、短時間妙めるとシャツキリなど、料理法によって、様々な食感が味わえる。種類によってその食感も異なる。
 姫路のれんこんはサクサクとして歯ざわりがよいのが特徴。
今回はてんぷら、(レンコンをクリツク)



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丹波の山芋


 伊勢参りから「伊勢いもを持ち帰って栽培した」「自生する自然薯(ジネンジョ)に改良を加えた」
「大阪府東能勢町の妙見参りのみやげとして持ち帰った」「奈良より移入した(大和芋)」など、諸説ある。江戸時代には篠山藩主青山公に献上されていた。
 ひとつのツルに1個しか作らず、土は深く、水も肥料もたくさん必要で、除草などのためにわらを敷くなど手間のかかる作物。
 丸くて大きく、粘りがつよい。「丹波の土自体が粘りが強く、いもがゆっくりしか育たない。また、内陸のため、昼夜の温度差が大きく、昼間に光合成で養分を蓄えるが、夜は冷え込むため消費しないですむ」ため、粘りのつよいよいいもができるらしい。
 また、丹波で普及したのは、稲の収穫が終わるといもの収穫、その後杜氏として出稼ぎへ行き、もどって4月にいもの植え付け、5月に田植えというサイクルで、稲作と杜氏の合間に出来る作物であったことも理由のひとつと考えられている。

皮をむき、すりおろして粘りを利用した料理にすることが多い。
おろしてとろろにするのはもちろん、揚げる、焼く、団子にして鍋の異など。
山いもを調理する時、直接肌に触れるとかゆくなる場合があるが、これは皮付近に多く存在しているシュウ酸カルシウムの針状の結晶が壊されて拡散し、手や口など肌に刺さってかゆみが発生するため。シュウ酸カルシウムは酸に弱いので、あらかじめ山いもを酢水につけて料理すると、かゆみが少なくなるといわれている。ただ、酢水につけると食感がかたくなるので気をつけること。
 皮の一部を残してむき、持つ場所を作ったり、手袋やポリ袋で手を覆って皮をむくなど、直接さわらない工夫をするとよい。



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とっちゃ菜


アブラナ科アブラナ属。
かぎ菜、しんしゆ菜、ふだん革など地方によって呼び方は異なる。タネはビタミン菜として売られている。
ビタミン菜には独特の苦味があるが、中野利明さんの家では祖父の時代から100年以上タネをとり続けているうちに、クセがなく味がまろやかな菜になった。元のビタミン菜とは風土気候によつて味がかわってきた菜っ葉。
「とっちゃでき、とっちゃでき」と茎を切って収穫する。根っこをとらないため、流通には向かなかつた。
夏にもでき、丸みがあって茎が白い。

くせがなく、まろやかな味。どんな料理にもよい。
中野さんは固定観念をもたず、いろいろな料理に使ってみてほしいとのこと。
おひたしや漬物以外にも、生でサラダ、中国料理などにも使える。
とっちや菜を煮びたしにするほか、



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網干メロン


日本古来のマクワ瓜(梨瓜群)と洋種メロンとの交雑で生まれたといわれる甘い露地メロン。江戸時代新宿鳴子宿名物だった鳴子瓜によく似ているという。大正年間(1921)より栽培され、昭和2〜3年頃これを網干メロンとして出荷したらしい。昭和10年頃兵庫県立疏菜採種場で改良
6月末から8月中旬ごろまで収穫。
果重15相前後のだ円形で、黒色は緑白色で浅い条溝が10条程ある。果肉は淡緑色で、香気高く、甘味は強く糖度15〜16度(最高級のネットメロンが16度程度)。甘いが後味がさっぱりとしているのが特徴。
肉質は歯切れ良く、熟果は肩の部分に輪状のネットを生ずる。
露地物、ハウス栽培物がある。

 生食。
 畑でヘタが離れるのを待って、完熟果を収穫する。熟した果実を皮やタネごと丸かじりして食べても柔らかく、小さいタネも気にならずおいしい。
兵庫県姫路他方ではお盆のお供物になくてはならない瓜だった。
今回は網干メロンのカット




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ハリマオウニンニク


戦前、加西市東剣坂町の北本兵作氏が村役場のすすめで栽培を始めたと伝えられている。当時加西市にはにんにくの食文化がなく、自家製として細々と栽培を続けていたが、戦争の混乱で放棄されていた。昭和30年代に入り、焼肉屋の主人が「秘伝のタレ」に合うにんにくを探して兵作氏のご子息に相談。竹やぶを探してみると捨て去られたはずの「ハリマオウ」は、20年以上も自生し、生き残っていた。
鮮烈な香りと味。うまい、辛い、臭いにんにく。


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富松一寸豆


天平8年8月聖武天皇の時代(729〜749年)にインドの僧侶、鞠山那(ぼだいせんな)が相を経て来朝した際、行基上人が摂津の難波津に出迎えた。この時仙那は「王墳豆」を携帯し、上人に与えて栽培をすすめ、上人は摂津の武庫村(現尼崎市武庫)の岡治氏(おかじし)に試作させたのが「一寸空豆」の起源とされている。

戦前、この蠍舶全国槻の産地となり、昭和30年頃には約馳が作触れ、重要なタンパク質給源となっていたが、昭和35年駆ピークに都市化により農地が減少し、近年ではわずか   に触れた農地で自家消章用として細々と栽培されている状況にあった。
現在、歴史的にも貴勒財産である『富松一寸豆腫よみがえらせ、末永く次世代に伝えることにより郷土愛の高揚、農業への理解を通して地域の活性化を図るため、富松神社で『富松一寸豆祭』が行われている。平成9年には、地域の農家を中心に『富松豆保存会が発足し、『富松一寸豆』の復活に取り組んでいる。
生産地は尼崎市。
一般的に於多福と呼ばれたが、『武庫一寸』の他に、地名を冠して同種覿の『富松一寸』『尼一寸』などがある。
大粒配種に属し、茎葉は大きく、草丈は約1mと高い。花色は紫色や淡紫色。富松一寸は白、莢は短大、子実は2〜3粒、粒径3肋m(一寸)、一粒重は3〜4g。

未成熟の豆は塩ゆで、さやごと焼く、天ぶらなど。
煮豆=「寺請」。乾燥させた保存用の豆を砂糖や醤油でじっくり煮込んだもの。
加工品としてはフライピーンズや煎り豆、お多福豆などの煮豆、お菓子の餡
調味料として醤油の主原料や、豆板醤の材料に使われている。



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丹波大納言小豆


あずきの「あ」は「赤」、「ずき」は「溶ける」という意味。また、「崩れやすい所」を意味する「あず」から付けられたとする説もある。名のとおり、通常小豆は煮崩れしやすいが、丹波の小豆のように胴がわれにくいマメを、殿中で抜刀しても切腹しなくても済む「大納言」にちなみ、煮ても腹の割れない小豆を「大納言小豆」というようになった。

産地は兵庫県丹波市春日町東。2∝氾年にテレビの料理番組をきっかけに、柳田隆雄さんが在来種「黒さや」の栽培を徽高させようと、東中地区の近所に呼びかけ「黒さや会」を発足させた。
大納言小豆は、未申の一部地域でしか栽培出来ないため、量産が出来ない。その為に(黒さや)を基に量産を目的とした品種に改良され、現在の春日大納言小豆になっている。
黒さや大納言小豆は、完熟すると英が黒く変化する。表皮が薄く食べた後、粕が残らない。煮ると指頭大になり、煮詰めても形がこわれない。光沢が美しく、形が四角のようで積み上げることができる。
糖分が多く昧が濃い分アクが強い。永く貯蔵しても、虫害がなく、変質しないなどの特徴がある。
大納言小豆といっても、いくつか種類があり、白さやなども総称して「丹波大納言小豆」と呼ぶが、そのなかでも「黒さや小豆」は由緒ある最高級品で、値段は北海道産の大納言小豆の10倍近く、同じ丹波産の2〜3倍高い。

和菓子の髄、おはぎ、赤飯などに使う。
小豆を煮ると渋味のあるアクがでる。これを除くために、小豆と水を煮立て、煮立ってきたら、湯を捨てる作業をする。これを「渋きり」という。小豆によって渋きりの回数は異なる。
オクラは生食。む


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食べくらべと試食、山本謙治さん
食べくらべのテーマは「八ちやんなす」
緑が「八ちやんなす」、オレンジが「千両なす」、ピンクが「筑陽なす」、水色「肥後むらさき」を、塩もみと、オイル焼きで食べくらべ。


皆さんの意見の中には
ナスには塩もみとオイル焼きの、それそれの向き、不向きがある。
八ちゃんナスと、ひご紫は、オイル焼きにすると、甘みがあり、実が軟らかく、トロ味がでて味わい深い。
千両と筑陽は塩もみでさっぱり感が出゛ていた。
筑陽はタネの存在が舌に残った。

千両ナスは食べなれているが、誰にでも好かれるように改良してつくられたナスで、甘みと苦みを無くした悲しいなすではないか、
その点八ちゃんナスは人気だった。


posted by 大竹道茂 at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 野菜と文化のフォーラム
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