2009年にミクニマルノウチがオープンする時に、三国清三シェフから、東京の食材にこだわりたいと相談を受け、野菜だけでなく、黒毛和牛の「秋川牛」だってありますよ、と紹介した。
東京には、肉牛の「秋川牛」、乳牛もいて東京牛乳を生産している、豚ではトウキョウエックス、鶏では東京烏骨鶏に、東京軍鶏などがあり、生産者や仕入先などを紹介したことから、ミクニマルノウチでは、それらを使ってくれている。

都政新聞の取材を兼ねた、NPO法人ミュゼダグリの農家見学会に秋川牛の生産者竹内孝司さんを訪ねた。
竹内さんの口をついてでたのは、原発事故後の風評被害の話だ。
昨年の7月15日、基準を超えた放射性セシウムで汚染された稲わらを食べた牛の肉が流通したとの報道で、東京市場での肉牛の価格は、一頭当たり100〜120万で流通していた和牛が20〜30万に下落してしまった。
安全な飼料を食べさせていたにも関わらず、と・・・
これら被害は、東京電力からの補償も受けられない現状だという。
自前で検査を行ったが、一頭当たり5千円の費用も認められない。
12月から東京都が全頭検査を実施したが、基準値以下で問題はないという。
最近、価格は戻りつつあるが、500キロの牛で5〜10万円安く、利益は出ない状態だという。

あきる野市菅生にある竹内牧場は、東海大学菅生中学の南に隣接して、黒毛和牛を東京一の肥育農家だ。
竹内家は先代が3反ほどの農地を米、麦、さつまの耕作で自給していたが、長男が後を継ぐにはと、今年71才の竹内さんは、18才の時に、1頭飼いから初めた。
1頭15万円だったが、この辺りで当時1反の畑が買えたという。
その後、家畜商の免許もとり、規模を拡大していった。
これまで、常時320〜350頭の肉牛を肥育していたが、現在は270頭になっている。
竹内牧場では、子牛を岩手から買い付けてきて、肥育する。

竹内さんの飼育理念は、まず健康的な牛を肥育する事だ。
さしを入れる前に健康な牛を育てることに注意をしている。それは美味しいことを意味するからだ。
若い牛には青草を与えているが、その後、肉にさしを入れるため24ケ月からは、イナワラに切り替えている。
サトウキビの絞りかす(バガスチューブ )は、最初から与えているが繊維が固くて胃袋が活性化し、健康に良い。
特に、良質なイナワラの確保が困難となっている。また、肥育においてはビタミンA制御が重要となることから、その粗飼料としては栄養価だけでなくβカロチン含量も留意する必要がある。
これらのことから、イナワラ代替粗飼料として、バガスチューブを与えているという。
「牛飲馬食」の言葉通り、牛は水をたくさん飲ませることが牛の健康には重要なことだ。
近くの湧水につながる水脈を探し当ててそこから牛の飲み水と夏場の牛舎を冷やすために、屋根を冷やすなどに利用してきた。
圏央道のトンネル工事で、水脈が一時枯渇しそうになったこともあって心配したが、5〜6年かかったが水量は戻ったという。

BSE問題なと厳しい時代を超えてきた。
一時「秋川牛」の名前で売ったことがあったが、地元あきる野市小中野の松村精肉店が、「秋川牛」の名で竹内牧場の和牛を売り出したことから、知名度は高まった。
そんな矢先の原発問題だった。
生後9〜10ケ月で300s。20〜30ケ月で800〜900s。
竹内さんが育てた牛は、芝浦の東京食肉市場に出荷し、そこから松村精肉店が仕入れて販売している。
現在、270頭まで減少したが、年間180頭(月12〜15頭 )を出荷してきた。
これだけの黒毛和牛がいるからには、東京の食材にこだわる多くのレストランなどに、今後どんどん紹介していきたい。
牛舎には、オガクズが敷かれ、糞尿による臭気が抑えられ、堆肥化でその効果が発揮されている。
上の写真をクリツクする
好気性菌(酸素で有機物を炭酸ガスと水などに分解するバクテリア) を使って、牛の糞尿をたい肥化している。
熟成中の堆肥の山に温度計を差し込んだら「66.5度」を示した。
堆肥は一袋500円で、販売しているが、都内の体験農園などが使っている他、狛江市が春肥と秋肥に5,000袋/30ℓ。練馬区が6,000袋/30リットル、持って行っているという。
上の写真をクリツクする。
堆肥の特徴効能として
「本堆肥は、牛糞に飼料残渣(牧草、ワラ)、及び食品残渣(オカラ、コーヒー滓)等を混ぜ合わせた物に土壌活性菌を加え、堆積発酵させ、完熟化したものです。
本堆肥の使用により、土壌中の空気含有量が増し、土壌活性菌の力で、有効微生物群の増殖が進み、土が活き返り、栽培植物の肥培、耐病性が高まり、また、化学肥料の肥効力が高まります。」とある。
牧場を見て、これなら効くと納得したので、帰りにいただいてきた。