昨年の10月に杉並の農家の皆さんの前で江戸東京野菜の話をしたことがあった。
現役時代に世話になった皆さんが集まってくれたが、その中に後継者のリーダーの1人、井口幹英さんが出席していた。
初めてお会いしたが、杉並の伝統野菜を作ってみないかと、話してみたら取り組んでくれるというので、小躍りして喜んだものだ。
世田谷の大塚信美さんが取り組んでいる。伝統大蔵大根の母本選定の集まりにも出席し、植松敬先生の話も聞いて勉強している。
今年になって、大塚さんが採種したタネをもらってきて、播種をしたようで、今月になって収穫の日程を連絡してくれた。

井口家は江戸から続く農家で、井口さんで11代目。
地域社会の活動にも積極的に貢献していて、今回は「さざんか天沼教室」の皆さんが播いた、伝統大蔵大根を収穫して、みんなで「ちゃんこ鍋」にして食べると云うので伺った。
杉並区清水1丁目は、荻窪駅から徒歩15分。
住宅街に残る畑は2カ所に分かれているが、2反歩の畑で生産を続けている。
地域のみなさんも、栽培されている野菜が収穫されるのを楽しみにしていて、
井口さんは、対面販売を基本にしているから、地域の人たちの気持ちをつかんでいる。
今年の夏は干ばつで、播種が遅れたこともあり、伝統大蔵大根の生育が遅れていたが、急激な寒波の影響もあり、収穫となったものだ。
この伝統大蔵大根、地元杉並の伝統野菜、「源内つまり」として杉並の地で種採りをしていこうとしていて、井口さんが種取採り用に目星をつけた大根が生育していた。
当日は、霜が溶けて畑はぬかるんでいたが、さざんか教室の代表の女の子が手ごろな大根を抜いた。

井口さんは、前日から、九州のみつせ鳥トリガラで3時間かけてコラーゲンたっぷりのスープを取っていて、伝統大蔵大根、白菜、ネギ、そして豚肉が入って、野菜の味を生かした「塩ちゃんこ」だ。
ガスコンロは二台、みんな煮えるのを楽しみに待っていた。
ちゃんこ鍋は、井口さんが用意してくれたスープが、伝統大蔵大根に沁み込んでいた。
「さざんか天沼」のみなさんも、自分たちが栽培した伝統大蔵大根だけに、喜んでいた。
さざんか教室の森戸繁教室長(杉並区教育委員会)に、伝統大蔵大根のルーツをお話したらメモされていた。
就農9年目の井口さんは、父親が無農薬有機栽培を実施していたのを引き継いでいた。
発酵鶏糞、油粕、魚粉、米ぬか等の有機肥料を混ぜて発酵させた、手作りのぼかし肥料を見せてくれだ。
即効性はないが、じわじわと効いてくるぼかし肥料などに、こだわっていて、手間のかかる作業が要求されるが、
江戸東京野菜も同じで、今後、杉並の伝統野菜・高井戸キュウリなどに挑戦してもらいたいものだ。