浅草寺にお参りして、左に曲がってすぐのところにある浅草木馬亭は、昭和52年(1977)から人気を集めている大衆演劇の芝居小屋で、伝統的な大道芸の復元に取り組む浅草雑芸団が、
”日本の大道芸探訪プロジェクト第7弾「もの売り・大道芸☆東京野菜コレクション2013」” として開催した。
この企画、「NPO法人おいしい水大使館・東京野菜STYLE」の成田重行先生が、浅草雑芸団のメンバーで七味(なないろ)唐辛子の売り口上でお馴染の上島敏昭さんに相談して、
江戸東京野菜をさらに広めようと、物売芸を実験的に行おうと云うもので、当ブログでも紹介している。

その後、東京新聞にも大きく取り上げられたこともあり、会場には、常連の大衆演劇ファンに混じって、浅草に近い、江東区や、葛飾、江戸川などにお住いの、江戸東京野菜コンシェルジュ講座修了者の皆さんが何人も見えていた。
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東京産野菜で作られた、獅子頭も展示され、オープニングでは会場からステージへ獅子舞。

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今回は、実験的なイベントで、ステージの前の方には、野菜で作った羊にネズミ、ペンギンやシャチ(なす)、カエル、ヘビ(キュウリ)、などが飾られ、
盛んに写真を撮る方もいて、欲しいというお客さんが団員を困らせる等、きめ細かな演出だ。
また、会場の後ろには売店ができ、会場に入った時には行列ができていた。
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そこでは、東京野菜の、冷やしたキュウリ、ニンジン、トマトなどが売られ、開演前の会場でボリボリかじっているお客が目立ったが、これが気取らない浅草なんだ。
企画の東京STYLEの阿部千由紀さんも浴衣姿で、野菜売り。
上島さんが流れを引っ張る。
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ステージには、顔抜きの絵が引っ張り出され、売り口上や歌が次々に披露された。
ホオズキ売り・一袋四文(子どもの小遣い稼ぎ)
糊やのばあさん、障子張の糊を売って歩く。
石見銀山ネズミ取り 銀の採掘場から出る鉱毒がネズミ捕りに効果があった。
お釜おこし、オコシ菓子、雷興しのようなもの
会場には、知ってるお年寄りも居て、「アー」とか「ウー」とか、反応が大きかった。
成田先生がステージに内藤唐辛子のコスチュームで現れ、江戸東京野菜のクイズをやるという。
話の流れの中で、「今日は偶然、江戸東京野菜の専門家が来ています」と、偶然を強調していたが、ステージに上げられた。 ステージから見下ろすと、会場の後ろに補助席も作られ、大盛況だ。
上の写真をクリックすると出題されたクイズ。
伝統小松菜、手島ナス、立派な東京うども用意され、この解説をさせられた。
クイズは3問出されたが、会場の中ほどから常連のお客様だと思うが、「全部正解だったのに、何もくれないのか!」、と抗議があり、一瞬緊張が走ったが、
そこは馴れたもの「何か配って、何か配って」と上島さんの指示に、あわてて女優陣が客席を回り、手おあげる正解した人たちに、飴のようなものを配り始め、会場は大爆笑だった。
私もステージの上で大笑いをしてしまったが、これも浅草の大衆劇場・木馬亭ならではである。

薬研掘りの七味(なないろ)唐辛子は、リーダーの上島敏昭さんの独壇場。
前振りで、新宿の内藤トウガラシプロジェクトの活動を紹介した。
まず最初に入れましょう、武州〜川越の名産は黒ゴマが入ります。黒ゴマは・・・
紀州〜有田の名産はみかんの皮の粉、漢方で用います陳皮、風邪の薬・・・
続いて入れます、江戸内藤〜新宿は八房の焼唐辛子。一つから八つの房を生じますところから八つ房、これを香ばしく焼き上げたのが名物、食欲増進、内臓強化・・・・
東海道は静岡朝倉の名産、「粉山椒」・・・。大和の国はケシの実・・・、野州 日光は・・・・
の名調子だが、ステージ上なので、いつものように、混ぜる手元が見えないのが残念だ・・・、この点は何か改善の余地がある。
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お土産には、七味唐辛子が配られたが、この気配りは嬉しいネ。
大辛と、中辛があるが、大辛をいただいた。

有名な野菜の紙芝居は、ゲストの金子ざん氏。
次の演芸は、野菜はどのように売っていたか、その売り声は、落語から。
大根、デェーコはいらんかね、、デェーコはいらんかね、ゴンボ、ゴンボ、ゴンボ
ダイコンと付けべきものに付けもせず、いらぬゴボオをゴンボと云う。
カボチャも落語から、トウナス エイ〜、トウナス
納豆売りは、なっと、なっと〜、なっとと、細かい演技が加わり、名演技が続く。
「飴や踊り」のパフォーマンス。
昔は、踊れるから芸人でもあり、チンどん屋さんもやっていたという「うんちく」に会場から「ウゥン〜」の反応。

江戸東京野菜として決定されている伝統野菜を、「鉄道唱歌」の節で歌った。
覚えきれないからと、メモを見ながら節をつけた。
東光寺大根、馬込三寸人参、馬込半白胡瓜、寺島ナス、
品川カブ、本田ウリ、黄金のマクワウリ、青茎三河島菜、
東京うどや、下山千歳白菜、砂村一本ネギ、ノラボウ菜、
金町コカブに、伝統小松菜、しんとり菜や、
奥多摩ワサビ、足立のつまもの、滝野川ごぼう・・・・」
上手に、納めたが、下山千歳白菜のトチセをセンザイと、黄金のマクワウリのコガネをオウゴンと読み間違えたが、これは誰も気が付かなかったろうが、初めてだからご愛嬌だ。
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東京で「バナナの叩き売り」と云うのは、九州では「バナちゃん節」と云う、歌を唄ってバナナを売るそうで、それをもじって、ウドでやってみょと云う
「やれ〜、東京野菜にその名を残す「ウドちゃん」一節語ろうか、生まれは信州軽井沢、涼しい気候のその中で、乳母日傘で育てられ、立派な根株となったもの、花の東京は武蔵野にお引っ越しとなりました。
新居は関東ローム層、地の下深く穴蔵に光も射さず真っ暗な、ミミズやオケラを友として、月日の経つのもわからずに、気が付きゃいつしか色白の、すらりと伸びたる身の丈は3尺余りとなりました。
自分で云うのもなんだけど、吉永小百合か原節子、別嬪さん、末はモデルか、女優さん 早くスカウト来ないかと、思えばときめく胸の内、いつしか刈り取られ、神田の市場に運ばれて、気が付きゃや八百屋のザルの上、
哀れな娘と思うなら、せめて美味しく召し上がれ、皮はきんぴら実は、天ぷら如何でしょう、東京野菜にその名も高いウドちゃん皆さん買ってくれ。」
には、大拍手だった。
なぜか、この衣装で金子ざん氏が登場、ベルサイユの薔薇をイメージしているのか。
これで、瓜物語の一節をひと踊り。
「瓜、売りが、瓜、売りにきて、瓜、売り残し、売り、売り帰る、瓜売りの声。
元和年間、美濃国の真桑村より、将軍家により召しいらされて、・・・。と、水菓子と云われて、夏の王様だったが、
今では、北海道の、夕張ウリ、それは夕張メロンだ。 九州には西ウリ、それはスイカだ・・・・・。」
内藤新宿・鳴子ウリに葛飾中川の畔の本田ウリは、金マクワ、銀マクワと云われた江戸のマクワウリ物語を、金子ざん氏は、一人踊りで演じきった。
上島さんは「我々は、マクワウリを一度食べてみたいという気持ちになっている」「マクワウリを食べる会を企画したいので、食べたい方はアンケートに書いてください」とお客さんに語りかけた。

色々な出し物があったが、東京の夏野菜だけを使った、冷やし中華をステージで作り上げた。
カイワレ大根、水菜、キュウリ、パプリカ、ミョウガ、ネギはたっぷりといれる。
手づかみの大胆な料理だが、あいの手の上島さんが「男の料理」だ。と・・・
それにゴマ油を熱したものを、ネギの上からかけ、ポン酢をかけた。
盛んに「男の料理」を強調しておいて、会場の皆さんに配られたが、美味しいと好評だった。
19時から始まった、浅草雑芸団の皆さんの1時間半にわたる熱演に、お客さんも満足されたようだった。
今回は、実験的なものと云っていたが、下ネタなしの至って生真面目で、大道芸としては、精度の高いものになった。次回の、再演を期待したい。
上島敏昭さん初め、浅草雑芸団の皆さん、成田先生ご苦労様でした。