フードジャーナリストの向笠千恵子先生から、お出掛け「すきや連」の第15回の例会のお話があり、事務局長で浅草「ちんや」のご主人住吉史彦氏からご案内が送られてきた。
第14回で、席が隣同士になった彦根市の千成亭・上田健一郎社長から、近江牛のお話を伺っていたので、お仲間に入れていただいた。

生憎の雨だったが、昼過ぎに新幹線で米原についた。
上田社長は、例会前の時間を利用して、見学会を企画されていて、近江牛を飼育する中川牧場、地元の銘酒・金亀の岡村本家を案内していただいた。
会場は、夢京橋キャスルロードにあるせんなり亭「伽羅」、
彦根城の堀にかかる京橋から西に延びる通りが、「夢京橋キャッスルロード」で、白壁と紅殻に煤を混ぜた黒格子、いぶし瓦。
その一軒が「伽羅」で、景観に配慮し町並みに溶け込んでいる。

例会は、向笠先生の挨拶で始まったが、指定された席からは写真が撮れず失礼した。
引き続き、先生から『すき焼き大全』企画の提案と協力の要請があった。
第14回すきや連例会ですでに提案されていたが、詳細がはっきりしてきた。
平凡社編集部の松井純次長からも、向笠先生とすきや連メンバーによる、わが国のすき焼き文化をわかりやすくビジュアルに紹介し、すき焼き文化の興隆を図る本『すき焼き大全』(仮題)だと、企画主旨と構成案の説明があった。
前著『すき焼き通』とこの度の『すき焼き大全』の2冊によって、日本のすき焼き文化を国内のみならず世界に普及することができればと考えているという。
すきや連例会の開催に当たって、中川畜産の中川吉明氏、金亀・岡村本家の岡村博之氏、「あゆのきむら」の木村泰造氏、「北風写真館」の青山香奈氏と、地元の皆さんの協力で開催できたと紹介された。
上の写真をクリツクする。
古来、日本人にとって牛は、農作業に活躍する家畜、仏教の殺生禁断思想から、牛肉食のタブー視されていた。
近江の湖東地域には古くから牛馬売買、皮革加工職人が居住していた。
戦国時代、甲宵・刀装具・太鼓に皮革を使用、戦国大名は皮革生産を重視して、彦根藩井伊家では、皮革生産職人集団を配下に置いていて、周辺の一定区画内で死んだ牛を買い取り、皮革を生産する権限を与えていた。
「御城使寄合留帳」(彦根城博物館所蔵『彦根藩井伊家文書』より)によると、江戸時代後期に将軍へ献上している。
寛政9年(1797)5月 老中太田資愛から「御内々御用」につき干牛肉1斤(600s)を差し出すよう命じられる。彦根藩では干牛肉を探し、医者の保管していたものを献上する。ただし幕府御用のために製造したものではないと断りを入れる。
寛政10年1月には、前年の牛肉献上依頼を受け、冬期に製造し献上した。
享和3年(1803)5月 老中牧野忠精より、「先年彦根の干牛肉は内々に将軍へ献上され、それを御用に使った。そこで今回も差し出すようにと将軍からお達しがあったので、6月に彦根にあった干牛肉を取り寄せて献上し、冬期に改めて献上用に製造して献上した。
という。
千成亭の小冊子「近江牛いまむかし」にも、「近江肉牛の飼育は約四百年の伝統をもち、元禄年間より彦根藩主から代々、将軍御三家へ「養老の秘薬」として牛肉の味噌漬けを献上されてきました。」とある。
乾杯は、食前酒として地元近江の地酒「金亀」で、ご発声は、ニューオータニ岡半の柴田進吉社長がされた。
私の席は、柴田社長のお隣と云うことで、近すぎて写真を撮ることはできなかったので、皆さんの様子を写した。
献立には、せんなり亭「伽羅」の熊谷直行料理長が厳選した料理が並んでいた。

上の写真をクリツクする
近江牛のテリーヌ、和風コンソメジュレ。
上ミノと丁子麩の酢味噌和え
近江牛トロの柚庵蒸し、
琵琶湖産小鮎煮
向附
近江牛の昆布〆 二種盛(タン・トロ)
両サイドがタン、中央がトロで、切った昆布を巻いていただいた。
つまの花穂、芋茎、大葉は、タンに巻いていただいた。
ここで、献立にはない「鮒ずし」が出された。
始めていただいたが、この地に伝わる伝統食だけに、美味しくいただいた。
冷製・近江牛ホホ肉の馬鈴薯あん掛け

向笠先生は、各テーブルを回って挨拶をされていたが、私どもの席にも見えて『すき焼き大全』への協力を依頼されていた。
上の写真をクリツクする
七輪に炭火、鍋は鉄なべではなく、熱伝導の良い真鍮の鍋で、これは女将のこだわりと伺った。
私どものお席は、ニューオータニ岡半の柴田社長(写真左下)、新橋 すき焼き「今朝」鬚男爵の藤森朗社長(写真中下)、お二人には第14回でお会いしていたが、
今回初めて、隠岐牛の(有)隠岐潮風ファームの田仲寿夫社長(右上)とご挨拶させていただいた。
山陰の沖合に浮かぶ隠岐は、大相撲の「隠岐の海」の出身地と云うことで、隠岐牛の話と共に、そんな話も伺った。
見学会で、肉牛生産の現場を見せていただいた中川畜産の中川晶成さんから、料理された36ケ月の黒毛和種雌「らん」の子牛登記をいただいた。上の写真をクリツクする
素晴らしいお肉で、同席された柴田社長も藤森社長も、絶賛されていた。
私など、牛の名前を知らされて食べるのは初めてで、感激!

強肴
特選近江牛ロースすき焼き、こだわり玉子、
野菜一式
こだわりの玉子で頂いた、「らん」ちゃんのお肉は絶品!!、美味し〜い!!
すきや連では、全国のすき焼き屋さんへ出かけて、例会を開催しているが、舌の肥えた老舗のご主人などが見えていただけに、上田社長も特別料理として厳選して出していただいたようだ。
逆光で、上田社長の写真がうまく撮れませんでした。すみません。
離れたところに、江戸の名工、東京會館の鈴木直登総料理長がお見えになっていたので、ご挨拶に伺った。
総料理長には、今年雛の節句に、声をかけていただいて、当ブログで紹介している。

上の写真をクリックする
お料理は、齋藤千佳世さんが担当で、テキパキと銘々にお料理を出していただいた。

茄子のムース、柚子シフォンケーキ、マンゴーのわらび餅
上の写真をクリツクする
最後に、中川畜産の中川吉明社長(右上)が挨拶されたが、素晴らしい肉だったことから大きな拍手が沸き起こった。
今回も新たな出会いがあった。
名刺交換をさせていただいたのが、銀座吉澤(畜産・すき焼き)の吉澤直樹社長と裕介専務、松阪市のすき焼き「かめや」の西村委代さん、伊勢市のあみ焼き・すき焼き「若柳」「豚捨」森大亮社長、京都 三嶋亭の上利渉営業統括次長、の皆さん。
上田社長をはじめ、近江の皆様にはお世話になり、ありがとうございました。
後日、すきや連事務局から、記念写真が送られてきた。

例会に先立って、見学会が行われ、上写真右から7代目中川晶成さん、6代目中川吉明さん(近江肉牛協会副会長)、浅草「ちんや」住吉事務局長。
上の写真をクリツクする
中川さんは、牛を育てるには、気候、環境、水が大切で、鈴鹿山脈の伏流水が湧き出ているが、ここではミネラル豊富な水を地下70メートル下からくみ上げ飲ませている。
配合飼料は使っているが、飼料の主体は、地元近江米の稲わらだという。
10年前から、繁殖も加え、肥育とで300頭を飼育している。
目標は「お代わりをして食べる肉」を理想としているという。
親子の篤い思いが伝わってくる。

上の写真をクリックする
彦根城は、滋賀県彦根市金亀町にあり、別名を金亀城とも云われているそうで、その名を取ったが地元の銘酒「金亀」。
岡村本家は、安政元年(1845)、彦根藩主・井伊大老より酒造りを命じられたいう。
滋賀、琵琶湖の東に位置するこの地は良質な近江米の産地で、鈴鹿山系の豊富な伏流水、伊吹山からの寒風と酒造りに恵まれている。
150年前と同じ製法「木艚袋搾り」の地酒を醸造している。
つきましては空メールを送信願います(添付ファイル4つあり)。
東京農業大学卒