第16回 すきや連の例会は、今度は横浜に伺うと、会長の向笠千恵子先生から伺っていたが、程なく事務局長をされている浅草「ちんや」のご主人住吉史彦氏から、お誘いのメールを戴いた。
明治28年初代荒井庄兵衛が創業の、横濱の老舗「荒井屋」の牛鍋。
「牛鍋」の響きは、幕末に横浜から入った文化として、なにかモダンな印象を持っていて、食べたことが無かったから、味わうことができるというので、ワクワクして横浜までやってきた。

横浜には何度も来ているが、港の方や、中華街辺りで、伊勢佐木の方は初めてなので、プリントアウトした地図を持って向かった。
この日は、世田谷の次太夫堀公園に行く用事があって、15時頃、成城学園前から相模大野経由で湘南台から伊勢佐木長者町へと、初めてのコースで向かった。

恒例で、粋に住吉事務局長の木が入り、向笠会長のご挨拶で例会は始まった。上の写真をクリックする
荒井屋の女将・荒井順子さんのご挨拶。
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「牛鍋」と「すき焼」の違いだが、
「牛鍋」は、割下(砂糖、醤油、味醂、酒等を混ぜた) を鍋に注ぎ、肉、野菜を煮る。
「すき焼」は、牛脂をとかして、お肉をあぶる、そこへ砂糖、醤油などを次々に加える。
牛鍋が関東風で、すき焼きは関西風だという。
昔編纂にかかわった「江戸東京 暮らしを支えた動物たち」(農文協)には、「〜牛鍋は関西ではすき焼きと呼ばれていたが、大正12年(1923)の関東大震災以降、牛鍋は関西風のすき焼きと混用され、その名は消えていった・・・」とあるが、どうだったのか今度、向笠先生に伺おうと思っている。

開宴に先立ち、卓話は、幕末の横浜に造詣の深い、関東学院大学名誉教授で社会学博士の小林照夫先生で、女将から紹介があった。
「幕末期の横浜居留地の外国人と牛肉、〜苦労した肉牛の仕入れと屠牛場の設置〜」
開港当初の横浜の状況を踏まえた、日本人が牛肉を食すようになった背景についてのお話しで、居留地の食肉文化に伴い、屠場や、公害問題など興味深いお話だった。
小林先生のご了解を得て、ご参考に当日配布されたレジュメを掲載する。
私の友人が、神奈川で牧場(服部牧場)をやっているが、肉牛とは違い酪農で、元は横浜市南区永田で搾乳をしていた。
平凡社の松井純氏(編集部次長)、水野良美さん(平凡社編集部)、土居秀夫氏(編集工房DOI)が紹介された。
例会に先立って、恒例の句会があったようで、和田順子先生(俳人、結社「絵硝子」主宰) から、発表があった。
一席 すきやきの とろける葱の 夕べかな
島崎進氏(常盤館・蒟蒻料理とすき焼き)写真右
二席 天高く 葱も肥えゆく 秋の里
松浦保氏(松浦椎茸園) 写真左
三席 古民家を 紅く彩る 吊るし柿
小金沢章文氏(下仁田ファーム小金沢農園・葱生産者)
下仁田の皆さんが上位入賞を果たした。
尚、向笠先生の句は、夏の中川一家の牛に感動し、先日、近江を再訪しそのときに詠んだそうなのが次の句
藁を食む牛らの肩に冬日燦 千恵子
乾杯のご発声は、前回開催地、彦根市の千成亭上田健一郎社長。
上の写真をクリックすると御献立
フォアグラの茶碗蒸し べっ甲仕立て
前 菜
酢橘釜盛り(合混ぜ)
紫芋白扇揚げ、 蓮根チップ
合鴨と松茸の炙り、 白髪葱
銀杏、 スモークサーモンの松葉刺し

牛焼霜造り
黒大根のけん、 針ラディシュ、 笹打ち葱
おろし生姜、 たまり醤油
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牛焼霜造りを三方から
お席が向い合せになった、宮臺香恵さん(洋食「香味屋」台東区根岸)

鱈白子豆腐
海胆、もって菊、 酢橘、 紅葉おろし、 ぽん酢
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向笠先生と荒井女将(写真右上)
記念写真を撮っているカメラマンの齋藤雄輝氏

仙台牛(宮城県産)
ヒレ 、サーロイン
ザク、 春菊、 千住葱、 焼豆腐、 白滝、 椎茸
卵 割下にて

左から、住吉事務局長。柴田伸太郎氏(ホテルニューオータニ岡半)、中川晶成氏(中川畜産・肉牛生産者・東近江市)。
彦根でお世話になった中川さんとは、美味しかった近江牛の「らん」ちゃんの話に終始した。
上の写真をクリツクする
左上から、上田社長(千成亭)、吉澤直樹社長、吉澤祐介専務(銀座吉澤・吉澤畜産・すき焼)、
上田社長とは、お隣に座らせていただいたので、前回お世話になったお礼を申し上げた。
お料理をいただきながら、上田社長と関西と関東の文化の話になり、上田社長がかつて千葉で研修中にカレーを食べたら豚肉が入っていて驚いたと、関西は牛肉だからで、野菜でも関東は根深ネギで、関西は葉ネギ、最近ではマクドナルドを、関東では「マック」だが、関西では「マクド」だそうで、どこが文化の分かれ目かと云う話になった。
名古屋の越津ネギが根深ネギだから、江戸の昔から鈴鹿山脈が文化の境だろうと、自説を紹介した。
吉澤社長は、先日の「NHKのゆうどきネット」を、見ていただいたようで、「最近。江戸東京野菜もデレビなどで紹介されていますネ」と云っていただいた。
左下、ホテルニューオータニ岡半の柴田さんは、お父さんの進吉社長に代わって出席、わざわざ挨拶に来てくれた。
右上、前回、近江でお世話になった中川畜産の中川吉明社長(近江肉牛協会副会長)にもお礼を申し上げた。、
右下、左から、和田先生 、江戸の名工、東京會館和食の鈴木直登総料理長、藤井紀美江氏(「牛や清」すき焼き・前橋市)。
和田先生は、お会いして以来、江戸東京野菜に興味を持っていただいていて、タネの求め方を尋ねられたので、「野口のタネ」を紹介した。
鈴木総料理長には、今年の春「おせちと節句料理」のご案内をいただき、勉強をさせていただいた。
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厳選された、お肉は、ヒレもサーロインも甘く、口の中でとろけた。

うどんのさらし、 香の物
水菓子
グレープフルーツゼリー、 巨峰
美味しかった。
お料理一つ一つには、書かなかったが、荒井女将のおもてなしの心が十分に伝わるお料理の数々で、横浜でのひと時を満喫できた。
ピサロ・キンセイの藤井正二氏(食品開発・販売)は都合で先に帰られたが、恒仁朗で出版したと「あきんどごころ商人心」を頂いた。
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日本語、英語、中国語に翻訳してあり、二宮尊徳の教えを中心に・・・・・・。
近田康二さん(中央畜産会「畜産コンサルタント」編集部)からは、「和牛 Japanese Beef 」の、英訳版を戴いた。
一冊は、部位の解説版。もう一冊は。すき焼きやシャブシャブ等、料理が掲載されている。
閉会に先立ち、右上の、荒井屋の後継者・亮一さん(写真上右)が挨拶をされた。
閉会の挨拶は、森大亮氏(あみ焼・すき焼「若柳」、「豚捨」伊勢市)。
今回も、新たな出会いがあった。
天井国安氏(アマイ食肉卸)、宮臺香恵さん、渡邉秀次氏(相鴨鳥安・東日本橋)の皆さん。