宇都宮大学で開催される「だいこんサミット2013」に、講師として招かれたということは、当ブログで紹介した。
東北新幹線には何度も乗っているが、これまで気にもしていなかったが宇都宮には1時間で着いた。東京からは通勤圏だ。
会場が峰が丘講堂と云うので、丘の上にあるのかと思って、タクシーの運転手に”峰が丘まで !、”と云ったら、この辺りは平坦で丘ない、峰町ならあるがという。 勘違いをしたかと思って、”農学部まで !”と云い直して会場についた。
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峰が丘講堂は、資料によると、宇都宮大学の前身である宇都宮高等農林学校当時の講堂で、由緒ある会場で、トップバッターとしてお話をさせていただいた。
講演の要旨は、「次代に伝えたい江戸東京野菜『粋な江戸っ子は白首ダイコン』として、すでに事務局に送っていたので、他の講師の皆さんと一緒に資料としてまとめられ配られていた。
先日、練馬ダイコンの母本選定に立ち会ったことは、当ブログで紹介したが、そんなこともお話した。
開会にあたって、だいこんサミット2013実行委員長の金子幸雄教授が挨拶されたが、
平成16年に「第1回 だいこんサミット2004」を開催して以来,今年で第10回迎え、祈念すべきサミットだという。
「だいこんサミット」のこれまでの講演は各回4〜7課題で、今までに47のご講演があった。
、
大根の歴史,専門的な遺伝や品種改良の分野,たくあんやキムチに関する食品化学分野、かいわれや薬味への利用,ご当地自慢の大根の話など,加えて毎回実物展示や試食コーナーを設け,大根に纏わる広いジャンルを提供してきたと云う。
この記念すべき第10回目の節目の講演会と云うことで、練馬大根や亀戸大根といった江戸東京のだいこんと,なにわの田辺大根復活の取り組み状況といった、東西の伝統野菜である ”だいこん” についてお話しいただく、と過分なる紹介を戴いた。,
お二人目は、
「白いダイコンと黄色いタクアン漬けの科学」
高崎健康福祉大学健康栄養学科の松岡寛樹教授
「タアン漬けは日本を代表する漬物であり、日本人の食文化に深く根付いている。
近年、食卓の洋風化により、漬物自体を食する日本人が少なくなり、漬物を全く食べたことがない人たちが増えている。
研究室の大学生に聞き取りをすると、知っている漬物といえば、お弁当の桜漬け、カレーの福神漬け、回転寿司にあるガリぐらいという有り様である。
そのため、ゼミ選びのための説明会でタクアン漬けの黄色の研究がなんて話をしても、いまいちピンと来ない学生が多く、着色料の研究ですか?といった反応が返ってくるくらいである。」という。
タクアンの塩蔵では、1ヵ月以上、長期に漬けることで黄変化反応を起こすという。
黄色い色は、クチナシ等で着色しているものと思っていたが、時と共に黄変化反応を起こすのだいうことを学んだ。

例年のとおり,講堂の周りの廊下では大根に深くかかわる企業のご参加により,各社自慢の大根品種や,出版物などの実物展示があった。
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(株)トーホクからは新倉聡育種研究室主任研究員が見えていた。
カネコ種苗(株)からは、くにきだ育種農場堀越英夫課長も見えていた。
渡辺採種場の加治誠部長がお見えだったので、青茎三河島菜のことをお伝えした。
みかど協和(株)の、椿克裕氏、ひなた村の遠藤孝太郎氏とも名刺交換をさせてもらった。
農文協からは関東甲信越支部の鈴木稔さんが来ていて、江戸東京野菜(物語篇)と、図鑑篇も販売してくれていた。
色々な大根の品種、製品などの展示と交流の時間が終わって、西の代表として、
なにわの伝統野菜 “田辺大根” の復活に向けての地域活動
田辺大根ふやしたろう会 谷福江氏
田辺大根は摂津東成郡田辺地区(現在の大阪市東住吉区)原産の白首大根で、ルーツは白あがり京大根と伊吹山(ねずみ)大根の交雑後代が田辺地区に土着したのではないかとされています。
大正11年編纂された「東成郡誌」、大正14年に編纂された「田辺町誌」に田辺大根 の記載があります。これらの文献より、田辺大根は江戸時代初期から栽培されていたようです。
また、明治時代までは丸みを帯びていたが、次第に長く、円筒形に改良されていったようです。この改良型は東住吉区の法楽寺の横門の前で栽培されたことから、横門大根と呼ばれました。
農村地帯だった田辺地区は、大正から昭和初期にかけての鉄道開通にともない、住宅地化していきました。そして、昭和25年にウイルス痛が発生し、田辺大根は病原菌に強い新品種にとって代わられました。
現在復活した田辺大根は、大阪府立農林技術センタ…の森下先生が、昭和59年秋に開催された大阪市農産物の品評会において、白首・尻づまりの大根を出品野菜の中に発見したことにはじまります。
森下先生とは、森下正博先生だと思うが、野菜の学校で名刺交換している。
島根の "味の縁結び"’「出雲おろち大根」の育成と地域普及
島根大学植物育種学研究室 小林伸雄教授
「出雲おろち大根」は、島根県出雲地域に自生するハマダイコンを育種素材として、小林教授らが品種改良を進めてきた島根原産の辛味ダイコンである。
2008年に島根大学の育成品種として発表し、大学農場で種子の販売・管理を行い、島根県内生産者の育成と−般普及を進めてきた地域特産野菜で、現在では島根県を代表する辛味ダイコンとして認識されるようになってきた。
以下この「出雲おろち大根」の育成経緯、特性評価ならびに栽培・普及状況等について紹介された。
菅野長右ヱ門前学長の挨拶で始まった懇親会は、大学会館生協食堂2階で行われた。
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写真上左・金子教授、写真右上は、大根サミットに誘っていただいた宇田靖名誉教授。
この度お世話になった先生方と写真を撮っていただいた。
何でも「だいこんサミット」が発足したのは、2004年春、だいこんを研究材料にしている、当時、宇都宮大学農学部食品化学研究室の宇田靖教授と、トーホク株式会社の新倉聡主任研究員、そして今回は事務局としてすっかりお世話になった宇都宮大学農学部の房相佑准教授の三人が、企画を思いついたと聞く。
素晴らしい企画だ! 、ご挨拶した先生方は謙遜して「いつ終わるかと思っていた! 」と語っていたが、
語りつくせない、ダイコンの話、だいこんサミットの更なる発展をお祈りする。
だいこんの話しではないが、田辺大根の谷さんと話していた時、江戸の農業のルーツは、摂津の農民によって切り開かれたことをお話したら、ご存じだった。
砂村(江東区砂町) に入植した摂津の農民によって、ネギが導入された歴史があるが、谷さんの話では、摂津の「難波ネギ」が残っていると云う。
そこで、400年の時空を超えて、摂津伝統のネギを東京で復活することについて、お互いに話は弾んだ。

これまで、どのような講演があったのか知りたかったので、第1回から第6回までの講演をまとめた『だいこんの魅力にせまる−だいこんサミット6年間をふりかえって』を買い求めた。
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6回までは、東京から講師は呼ばれていないようだが、「ダイコンの歴史と文化」として金子教授が書いていて、参考文献として「江戸東京野菜(物語篇)」と「江戸東京野菜(図鑑篇)」から引用などしていただいていて恐縮だ。
今回も、新たな出会いがあった。
宇都宮大学農学部食品化学研究室 橋本啓教授、宇都宮大学農学部 房相佑准教授、東日本栄養医薬専門学校 松岡朝歌博士、神奈川県農業技術センター野菜作物研究課 北浦健生課長、品質機能研究課 吉田誠課長と、名刺交換させていただいた。
そして、準備万端、宇都宮大学でだいこん研究をされているスタッフの学生さん方にもお礼を申し上げる。
後日、房先生が、江戸東京の大根について話された方々を調べてくれたが、2010年に「されどダイコン、練馬大根、ただのダイコンにあらず」で白石好孝さん、2011年には「東光寺干し大根の現状と課題」でJA東京みなみ本店地域振興部の河野一法課長が講演していた。