東京都中央改良普及センター西部分室では、JA世田谷目黒ファーマーズセンターで、このほど伝統大蔵大根の検討会を開いた。
固定種の大蔵大根は昭和40年代までは栽培されていたが、栽培しやすく流通に乗りやすい、青首ダイコンに切り替わり、大蔵大根を栽培する農家は激減した。
平成8年、栽培しやすいF1で大蔵大根を復活させようと、普及センターと地元農家で試作、交配種の大蔵大根を翌年から流通させ復活させたとしていた。
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平成25年 せたかやの地場野菜「大蔵大根」のパンフレットをみると、裏面に「ここで買えます! 大蔵大根」には、JAの共同直売所と、庭先販売の農家が掲載されているが、年々減少して、JA世田谷目黒地区で3人、JA東京中央砧地区で3人、JA東京中央千歳地区で9人の15人になってしまった。

江戸東京野菜の復活・普及の中で、2008年に小金井市の井上誠一さんが固定種の大蔵大根を栽培復活し翌年採種を行っているが、
世田谷では、2009年、先祖伝来の大蔵大根を復活栽培したいとする大塚信美さんが栽培を始め、2010年から自家採種を行ってきた。
特に、大塚さんは2011年に母本選定をする際、大蔵大根の種苗登録に資料作成を行った、植松敬先生を招いて母本選定を行い、昔のダイコンに近づけている。
今回、参加したのは、世田谷区で大蔵大根を生産している農業者の他、普及センターやJA世田谷目黒、JA東京中央の職員15人が参加した。
中でも、大先輩の高橋岩雄さんも参加された。
伝統大蔵大根の生産者が栽培、販売状況の報告。今後の展望と課題、発展に向けた方策等を検討した。
販売状況では、「地元の青果店に出回らないため庭先販売の看板商品となっている」「今後も積極的に取り組みたい」と前向きな意見が出る反面、
「病害虫による被害や、葉が広がり株間を広くとるため生産量が少ない」等の栽培面での意見が出された。
展望としては、「F1とは味か違い本来の味」「需要があり有利販売の可能性がある」一方で、「すが入りやすい」「作りにくく、抜きにくい」等の意見がも出たが、ポジテブな意見が支配した。
生産者のひとり大塚さんは「ようやく伝統大蔵大根の、良い点も悪い点もわかってきた。」と云う。
現在、築地市場の東京シティ青果や、高島屋新宿店、伊勢丹新宿店、また、味を知ったバイヤーなどは、伝統大蔵大根にこだわり始めていて、需要をまかないきれない状況にあるのが現状。
今回、普及センター西部分室(菊池豊主任普及指導員) がまとめる形で、このような検討会を開催した事は重要なことで、大蔵大根の生産者が15人になってしまった中での、伝統大蔵大根の栽培意欲に繋げるには消費者の支援も必要になってくる。